第一部は「アウグスト・エッシェンブルク」
テントでの魔術ショーとか、「イン・ザ・ペニー・アーケード」もそうだけど、子供の目にうつる日常から断絶されたような空間とか、その瞬間のイノセントな着想みたいなものを描くのがどうも好きらしい。けど視点は常に大人のそれで、むしろイノセントな世界から弾かれて、もう踏み入ることができないエデンの園として描いているというか、その墜落感が好きなんだろうけど。
自動人形は既に失われたものなのに、そこに芸術家の情熱を一身に注ぐアウグストと、むしろ人々の堕落を冷めた視線で見つめる嘲笑的なハウゼンシュタイン。やはりハウゼンシュタインのほうが生き生きと描かれている気がする。
第二部は、なんでもない退屈な、あるいは幸福な時に、脈絡がありそうでないような突然の激情、みたいな。
筆が冷めてる、あるいは醒めてるという感じ。感情的に描かれてはいても、その感情はまるで静物のようなのだ。
第三部の「東方の国」が一番好き。
詩的であり幻想的であり。あんまり人を描くのうまくないんじゃ、と思った。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説(海外)
- 感想投稿日 : 2013年9月15日
- 読了日 : 2013年9月12日
- 本棚登録日 : 2013年9月12日
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