ヤン・シュヴァンクマイエル好きだわー。
まさにおとぎ話。3Dの「アリス・イン・ワンダーランド」は同じアリスでも、ぜんぜんおとぎ話の質感がなかった。それはどうしてなんだろう?
シュヴァンクマイエルの映画は、物の質感がとっても大事なんだと思う。たとえばよく出てくる引出つきの机が、ニトリのオーダーメイドだったら途端に世界がぶっ壊れてしまうだろう。今の机といえば大抵はどれも同じ塗料、決まった色で、ニスが塗ってあって。そこには物固有の触感がない。
けどマイエル(この略し方どうなんだ?)の机はきっとザラザラしてる。たぶんところどころささくれていたりして、時には棘が刺さったりする。
引出つきの机で思い出すのは、あれはきっと子供の映像なんだろうということ。ウサギにしろ帽子屋にしろ、人形はどことなく恐いが同時に愛らしくもある。「かわいい!」で一括りにできない、そこにはやっぱり独特の触感、すなわち「ささくれ」がある。
机も定規も枯葉もインクも、言葉にすればどれも同じだけれども、マイエルの手にかかれば、どれも普通の机でないし、普通の定規ではなくなる。
普通じゃない物で占められた空間はもはや普通じゃない。
「アリス・イン・ワンダーランド」は、ごく普通の世界から穴ぼこを抜けて不思議な世界「ワンダーランド」へ行ってしまうが、マイエルの場合はもともとの世界(アリスの部屋)が既にして普通じゃないということになる。
だからマイエルの「アリス」はもともとワンダーランドにいて、穴ぼこ落っこちようが首をはねられそうになろうが、そもそもアリスは「ヤン・シュヴァンクマイエルのワンダーランド」のなかから抜け出せない。そこの住人なのだ。
ってナニ言ってんだろう、意味わかる?
なんにせよ3D映画「アリス・イン・ワンダーランド」とこの「アリス」との対比はなかなか面白いと思うのです。
なにはともあれ。間とか効果音とか、完璧!と思う。
それに引出のノブが引っこ抜ける「かぶせ」も最高。
あと、パンツ。パンツは外せない。パンツだけで星5つの価値がある。
- 感想投稿日 : 2012年6月19日
- 読了日 : 2012年6月18日
- 本棚登録日 : 2012年6月19日
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