宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2013年7月18日発売)
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感想 : 84
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この宇宙が特別なのかそれとも普通にある宇宙の一つなのか。

 物理学と神の関係、そこから派生して「人間原理」と物理学の関係を詳説します。

 欧米の物理学者は「この世は神がつくりたもうた」という発想からビッグバン仮説などを考えだした(すくなくとも違和感はないだろう)というのは日本人の誤解。欧米人の物理学者は説明のつかないことを異常に嫌い、物理学は純粋完璧な学問、という位置づけにしたいのだそうです。

 人間原理とは、「この宇宙は人間が存在するのに条件が合いすぎている」ということから人間を存在させようとする何かが宇宙の生成に影響している、という考え方を言います。

 この本の中でふーん、と思ったのは、ビッグバン後、インフレーションに揺らぎ(むら)があった、という部分。インフレーションは宇宙発生後10のマイナス36乗秒後に始まり同35乗秒後に終了したとされます。もし均一に宇宙が拡大したのなら今の宇宙も均一で銀河や恒星が発生することができず、必然的に人間も存在できません。インフレーションにはごくわずから揺らぎがあったはず、という仮説が出され、その後インフレーションの残渣である宇宙背景放射にごくわずかなむらがあることが立証され、この揺らぎは証明された…と。

 別の本で読んだ対称性の破れと同じように興味深い現象です。

 この世を神が作った、という話と矛盾するからです。完璧な神が作ったこの宇宙は完璧なはず。それが「対称性の破れ」や「インフレーションの揺らぎ」の結果となると…?

 非常に面白い本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 世界や日本を知る
感想投稿日 : 2013年7月23日
読了日 : 2013年7月23日
本棚登録日 : 2013年7月23日

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