ダブリナーズ (新潮文庫)

  • 新潮社 (2009年3月2日発売)
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感想 : 57
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ジョイスの初感想です。
『ユリシーズ』『若き芸術家の肖像』『フィネガンズ・ウェイク』と
欧米の読むべき文学選に必ず入る作家、文学好きとしては外せないのです。

パリジャン、ロンドンっ子、ニューヨーカー(そして江戸っ子も)の慣用句
その中のひとつが「ダブリナー」だそうです。
といって、ジョイスが意図的に名付けた造語だから、知らなくてもいいのです。
ダブリンに住んでいる人たちの人生を描くとダブリン市民気質がわかってくる。
つまり『ダブリナーズ』の生態と意見。

ダブリンはアイルランドの首都、と知っていても
アイルランドの古い深い歴史の方はうすぼんやりです。
ところが、この短編集を読むとなんだかわかってきます。

ジョイス作品は音楽的で造語が多くパロディ満載で、翻訳が大変むずかしい作品
ということですが、この柳瀬尚紀訳は画期的新訳なので雰囲気が伝わって
原作に近くおもしろく読めるというわけでした。

『赤毛のアン』のモンゴメリがよく描く、不思議なアイルランドのおとぎ話の例。
『風と共に去りぬ』スカーレットの父親が強烈なアイルランド気質だった。
読みながらそんなことも思い出しました。

一世紀前のダブリナーズなのですけど、どこにでもいそうな
けれどもなんだか不思議な一味違う15のダブリン市民の日常描写。

15編の短編どれも味わい深かったですが
最後の「死せるものたち」は、賑やかに華やかに幕開けし
最後に哀愁ただよう情景で終了する、印象的な一編でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2021年
感想投稿日 : 2021年7月5日
読了日 : 2021年7月5日
本棚登録日 : 2021年7月5日

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