なまけもので、金遣いが荒く平気で借金を繰り返し、暴力沙汰を起こす、ハチャメチャな元妻の四息子たちのしりぬぐいをつねにしなければならない佐藤紅緑と二人目の妻シナ。
豪快で直情径行なお父さんの遺伝子を受け継いだから、サトウハチローをはじめとする不良4人息子たちが出来てしまったのか、またシナ(三笠真理子)という女優に異常に執着して、元妻を追い出し、病死させてまでしまった紅緑の仕打ち、息子たちの寂しさ、その環境がそうさせるのか。
ほとんどをシナの目から見た佐藤家の行く末が、この中編のストーリー。もちろん作者がシナさんと紅緑の娘愛子だから、その視点になるのだろうが。
視点といえば主にはシナさんであるが、多々の登場人物にくるくると視点が変わるところに面白さを増している佐藤愛子の筆力、うまさがあると思う。
また、昭和時代の始まりから敗戦までのこの小説の時代背景が、敗戦の時にわたしは四歳だったので、「そうかこんな時代模様だったのだ」といまさらながら目を開かせてくれた。わたしの両親の話からではうすぼんやりしていた記憶がよみがえるような気がした。卑近さがよかった。いや、こんな派手な状態ではなかっただろうが、生活している姿が生き生きと立ち現れているからなのだ。
この小説はちょっと日本版『カラマーゾフの兄弟』を意識しているようなと思っていたら、下編でシナと愛子のそんな会話が出てきたよ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2021年
- 感想投稿日 : 2021年1月24日
- 読了日 : 2021年1月17日
- 本棚登録日 : 2021年1月24日
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