ケアを問いなおす: 深層の時間と高齢化社会 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房 (1997年11月1日発売)
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本棚登録 : 121
感想 : 13
5

かなり前の本でありながら、私に取っては示唆に富む内容だった。
筆者の(多岐にわたる、そしてカタイ)専門分野がありながら、もっと深いライフワークだったり本当に心からの疑問について真摯に向き合っているということ(特に6章とエピローグ)が尊い。

備忘

・冒頭のアインシュタインの話

・私たちは遺伝子の乗り物で過ぎないということ

・生殖を終えた後の寿命が長いから固体が大事で、それは社会性=ケアの中で生まれる。人間はケアする動物。

・日本では今は死に向き合ったこころの拠り所は空白状態。死についてしっかり教わっていない、考えられていない。

・モノ不足の時代が終わったあとは、モノの消費ではなく、商品に込められた情報の消費をしている。

・物質的欠乏や経済的理由が家族を結びつける大きな要因であった時代が終わった今、最後に家族に残られるものは何か。情緒的関係。

・近代西洋科学はユダヤキリスト教文化の延長線。自然と人間は切断されている。神が宇宙に敷かれた法を明らかにし、それを通して神の意図を明らかにするという信仰と結びつく。

・直線的な時間、円環の時間(生まれる前は無であった、死んだ後はそこに戻る)、深層の時間=生と死が交わる時間。

・結果として死者に対するケアも必要。ターミナルケアはその者の死を持って終わるわけではない。

で、ケアは人間をそんな深層の時間につなぐ可能性を秘めているというところに至るわけだけど、それは自分の中のライフワーク的な疑問が一歩前進する新しい視点でした。読んでよかった‼︎

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年8月18日
読了日 : 2022年8月18日
本棚登録日 : 2022年8月18日

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