栩木さんセレクトの間違いない短編集。異国が舞台の話がほとんどなので先行の二冊に比べるとやや派手でオチの刺激が強すぎるような印象もあるけれど、読者を思いもつかない場所に押し流していく力は凡百の小説と比べものにならない。おもしろいけれどこちらのリズムを合わせていかないと読めない作家(ガルシア=マルケスとか)がいる一方で、トレヴァーはただそのままページをめくっていくだけでぐいっと引き込まれて落っことされる。念力使いのようだ。
「サン・ピエトロの煙の木」「版画家」が特によかった。第三者から見たらよくあるつまらない関係・出来事かもしれないものが、当事者には切実な、それこそそれなしには生きられなかったり、それによって人生が決定的に方向づけられたりする重大事でありうること。光が消えたときの光景があまりに無残なのに、そういう出来事なしに生きることも不可能なのだとわからされてしまう。トレヴァーはこわい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
英米 - 小説/物語
- 感想投稿日 : 2016年5月23日
- 読了日 : 2016年5月23日
- 本棚登録日 : 2016年5月23日
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