エトロフ発緊急電 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1994年1月28日発売)
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感想 : 107
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第二次大戦秘話三部作の2作目。

最初は本当に多くの登場人物が出てくるし、場所も東京、択捉島、アメリカと様々なので、どこで、どのようにすべてが繋がって関係してくるのかが分からないため、読むスピードが遅くなりがちなのですが、だんだんと関係性が見えてくると、スパイ活動を中心に描いているので面白くなっていきました。

日本の情報をつかむためにアメリカから潜入する主人公ですが、様々な危険を潜り抜けながら逃げ回ったりするので、ハラハラ、ドキドキする場面がある一方で、日本の南京大虐殺の描写もあり、現在もまだ戦争を続けている国のニュースのことを思い出し、余計に戦争のむごさを感じました。

この時代の愛国心、マイノリティ、そして人権とは戸言うことを考えさせられました。

最後に、択捉島の場面で出てくる北千島にいたとされるアイヌ人、クリル人という民族がいたことを知れました。今では彼らの文化も言語も残っていないそうです。日本が強制的に彼らの住んでいた地域を奪ったという歴史があることも知り、もっと第二次世界大戦前後の日本についてまだまだ勉強不足だな感じました。

*日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年10月9日
読了日 : 2022年10月8日
本棚登録日 : 2022年10月9日

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