私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記 (文春e-book)

著者 :
  • 文藝春秋 (2022年10月21日発売)
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 統合失調症の母、会社勤めの父、小学校低学年の弟、そして高齢の祖父と暮らす8歳の少女・ゆい。
 家事をする者がおらず、買い物や料理を幼いゆいが行うのが常態化し、学校を休むこともしばしば。父は母の病状から目を背け、弟だけを気にかける。
 そんな生活が高校生になっても続き、ゆいの心にも限界が……。


 孝行者好きな日本では見過ごされがちな、ヤングケアラーに焦点を当てた漫画。
 1人に密着取材したわけではなく、複数の人のエピソードを繋ぎ合わせているとのこと。そのせいか、何か不自然さが漂う仕上がりになってしまっている。

 例えば、母親は通院していたはずだが、経緯の説明なしに、別の病院に電話で診察を依頼するシーンが出てきたり。
 妄想がひどくて家から一歩も出られなかった母親が、パートに出始めたり、面談に応じたり。寛解?の度合いが極端すぎる感じだ、とか。(統合失調症ではよくあることなのかな?)

 ゆいは結局入院することになるのだが、その病院の看護士?の態度がなんとも腑に落ちない。
 面会に来た母親の身勝手な言い分に切れ、今までの憤懣をぶちまけるゆいに対し、
「愛を返せない人に愛情を求めるのはよせ」
「気にかけてくれた人が他にいたのに、見過ごして来なかったか?」
などと、かなりキツいお言葉。
 たった今、身内に嫌なこと言われたばかりの患者に、それ言いますか? ようやく自分の正直な気持ちをぶちまけられたというのに……。
 それでいて、後日面談に来た母親には、
『否定や批判はされない場ですので安心してくださいね』
 ええ~! 患者は批判されたのに?!
 すっごい嫌な人にしか見えんかった(笑)。
 これも継ぎはぎエピソードの影響かとは思うのだけど。


 作者はあとがきの中で、

 子供だってプライドが高い。同情されたくないし、相手のことを冷静に見極めて行動している。

こんな感じのことを言っている。
 まあそうなんだけど。無邪気一辺倒な子供はむしろ少数派なんだろうけど。

 取材した人達の場合は、子供らしく生きてこられなかったのが原因なのでは? そうしないと病気の親だけでなく、他の家族だの親戚だの、学校の先生からまでも怒られ、文句言われるんだもの。
 他の子供がもっと時間をかけて身に付けるはずのものを、早いうちに短時間で、なおかつ自力で覚えなきゃならなかっただけ。
 それを『したたか』の一言で片付けてほしくないなあ。

 ヤングケアラーの実態の一端を知ってもらうには良い本なんだけど、違和感の残る本でもあった。
 また、これがヤングケアラーのスタンダードと思われないことを祈る。ここまで大変ではない、軽度のヤングケアラーも大勢いるのだろうから。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2023年5月31日
読了日 : 2023年2月10日
本棚登録日 : 2023年2月10日

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