統合失調症の母、会社勤めの父、小学校低学年の弟、そして高齢の祖父と暮らす8歳の少女・ゆい。
家事をする者がおらず、買い物や料理を幼いゆいが行うのが常態化し、学校を休むこともしばしば。父は母の病状から目を背け、弟だけを気にかける。
そんな生活が高校生になっても続き、ゆいの心にも限界が……。
孝行者好きな日本では見過ごされがちな、ヤングケアラーに焦点を当てた漫画。
1人に密着取材したわけではなく、複数の人のエピソードを繋ぎ合わせているとのこと。そのせいか、何か不自然さが漂う仕上がりになってしまっている。
例えば、母親は通院していたはずだが、経緯の説明なしに、別の病院に電話で診察を依頼するシーンが出てきたり。
妄想がひどくて家から一歩も出られなかった母親が、パートに出始めたり、面談に応じたり。寛解?の度合いが極端すぎる感じだ、とか。(統合失調症ではよくあることなのかな?)
ゆいは結局入院することになるのだが、その病院の看護士?の態度がなんとも腑に落ちない。
面会に来た母親の身勝手な言い分に切れ、今までの憤懣をぶちまけるゆいに対し、
「愛を返せない人に愛情を求めるのはよせ」
「気にかけてくれた人が他にいたのに、見過ごして来なかったか?」
などと、かなりキツいお言葉。
たった今、身内に嫌なこと言われたばかりの患者に、それ言いますか? ようやく自分の正直な気持ちをぶちまけられたというのに……。
それでいて、後日面談に来た母親には、
『否定や批判はされない場ですので安心してくださいね』
ええ~! 患者は批判されたのに?!
すっごい嫌な人にしか見えんかった(笑)。
これも継ぎはぎエピソードの影響かとは思うのだけど。
作者はあとがきの中で、
子供だってプライドが高い。同情されたくないし、相手のことを冷静に見極めて行動している。
こんな感じのことを言っている。
まあそうなんだけど。無邪気一辺倒な子供はむしろ少数派なんだろうけど。
取材した人達の場合は、子供らしく生きてこられなかったのが原因なのでは? そうしないと病気の親だけでなく、他の家族だの親戚だの、学校の先生からまでも怒られ、文句言われるんだもの。
他の子供がもっと時間をかけて身に付けるはずのものを、早いうちに短時間で、なおかつ自力で覚えなきゃならなかっただけ。
それを『したたか』の一言で片付けてほしくないなあ。
ヤングケアラーの実態の一端を知ってもらうには良い本なんだけど、違和感の残る本でもあった。
また、これがヤングケアラーのスタンダードと思われないことを祈る。ここまで大変ではない、軽度のヤングケアラーも大勢いるのだろうから。
- 感想投稿日 : 2023年5月31日
- 読了日 : 2023年2月10日
- 本棚登録日 : 2023年2月10日
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