動物からの倫理学入門

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  • 名古屋大学出版会 (2008年11月20日発売)
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動物を題材として倫理について考えてみようという趣旨の本である。翻訳本ではないため、語りかけるような文体で読みやすかった。また、前半の章で倫理について考える際に主要な考え方とその欠点などについて説明されており、題名通り倫理学の入門としてよいと思った。動物保護に対する反対意見とそれを倫理的に各立場ではどう説明できるかどうかについて書かれており、動物保護の反対者と対峙するときの非常に参考になると思った。動物愛護活動をされる方は一度目を通して、動物愛護活動の反対意見についてどう答えるべきかについて知見を増やしておくことを薦める。

動物保護について考えるときに、どういう立場(功利主義・カント主義など)をとればよいかはっきりした答えを出すことは難しい。ただ、どれが正しいかを考える中で、限界事例(植物人間や、赤ん坊、老人などの知的レベル・身体レベルが動物以下の人間)や、ペットと家畜などで比較することで、どの立場(または状況に応じて複数の立場の組み合わせ)がより普遍的なのかが判断できる。はっきりした正解はなくても、ましな答えを見つけ出すことは可能と説明していて、なるほどと非常に納得できた。
p. 133: これらの立場のどれがすぐれていてどれが劣っているか、といったことについて,もちろんここで結論を出すことはできない。しかし限界事例や動物の問題をどれだけ整合的に扱えるのか,ということはまちがいなくこれらの理論の優劣を評価する際の一つの視点になるだろう。


ヒュームの法則(「である」から「すべき」は導きさせない)を初めて知りなるほどと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: animal
感想投稿日 : 2014年3月15日
読了日 : 2014年3月15日
本棚登録日 : 2014年3月15日

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