タイトルにあるように、トレードオフがテーマの本。
全編を通して訴えているのが、上質さと手軽さはトレードオフであるという1点のみ。
そのコンセプトを多数の事例を紹介することで説得力を高めている。
上質さと手軽さの両方を満たすサービス・商品は存在しなく、この領域を幻想(ミラージュ)とまで言い切っているのが面白い。
企業はよくこの領域を狙いがちなので、それは辞めた方がいいと警告している。
スターバックス、ティファニー等の有名企業だけでなく、ビル・ゲイツなどの著名人が投資した鳴り物入りのベンチャーやセグウェイ等がダメだった例なども紹介されていて、面白い。
逆に、手軽さ、上質さのいずれもない場合は不毛地帯と読んでおり、ここにいる場合はいずれの価値を高めるか、やめてしまうという選択になる。
本書はジャーナリストによって書かれたものであるせいか、このコンセプトの紹介にとどまっているのが残念。
こうした2軸で考えるという、ざっくりとしたコンセプトは非常にわかりやすくて重宝する反面、同一ドメイン内に複数の商品ポートフォリオがある場合に、それらをこの2軸だけで解釈しようとすると難しい。
また、どのように、コンセプトを磨いていくか、その実践方法については特に記載がないので、従来のマーケティングの本を参考にした方がいい。
以下メモ
「上質と手軽」の選択を見誤らないための5ヶ条
1、テクノロジーの進歩を見落としてはならない
2、商品・サービスの成否は、目新しいかどうか、時流に乗っているかどうかよりも、上質と手軽のさじ加減で決まる
3、上質と手軽のどちらをどれだけ重視するかは顧客層ごとに異なる
4、商品やサービスを小さく生むと、小回りがきくため、テクノロジーの進歩や競合他社の動きに対応しやすい
5、新しいテクノロジーは必ずといっていいほど、不毛地帯で産声を上げる
- 感想投稿日 : 2012年9月10日
- 読了日 : 2012年8月10日
- 本棚登録日 : 2012年9月10日
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