主著の解説と伝記的なこともする本。
ロールズが気になるが分厚い本に取り組むのは気が重いという人にちょうどよいかと。また、最新の研究を踏まえた解説になっているのでロールズを少し知っている人も本書から得るものは多いはず。
とはいえ一般的な解説部分はコンパクトなので教科書などである程度触れたことがない全くの初学者にはむずかしい箇所もあるかもしれない。
いわゆる正義の二原理の理解よりもそれを導出していく際に用いられる彼の独自概念、「自尊の社会的基盤」「道理性(と合理性の区別)」「背景的正義」、「2つの道徳的能力」等をしっかりフォローしており、とても助かる。
個人的には正義論出版までの軌跡、特にウィトゲンシュタインの影響はおもしろかった。また、コミュニタリアニズムのあたりをささっと済ませているのがグッド。
『正義論』から『政治的リベラリズム』への転回についての記述はこれまで抱いていたロールズの印象を変えてくれていい読書体験になった。
ロールズの人がらに関する直接の記述はないが、彼の知的格闘の歩みを読んでいるとこの人は真面目で誠実でいい人っぽいなと思えてくる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年5月30日
- 読了日 : 2022年5月30日
- 本棚登録日 : 2021年12月21日
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