源氏物語を反体制文学として読んでみる (集英社新書)

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  • 集英社 (2018年9月14日発売)
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感想 : 7
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筆者が小説家だからか、次回作へ向けての下調べとプロットのような本。
前半は藤原一族を中心とした政治の解説。系図もあり初心者にもわかりやすい。
後半は紫式部と道長の関係の解説…ではなく資料に基づかない筆者の推測。

藤原一族の摂関政治全盛期において、実在する源姓を主人公とした『源氏物語』。
源姓は時代の敗者ともいえる臣籍降下した元皇族に与えられる姓、藤原氏が権勢を振るう前の親政時代が舞台、悪玉は藤原氏がモデル。
藤原兼家が確立した摂関政治黄金期に抵抗勢力の源氏
反体制の文学であるということらしい。
しかし、道長は源の入婿になっているので源側の人間とも言える。
筆者は道長を「気遣いができる好人物」としているが、様々な傍若無人な振る舞いが記録に残る道長をいい人間として描き、後半の紫式部との相思相愛のラブロマンスに繋げたいのだろう。

紫式部は少女時代から土御門殿に出入りしその頃から源氏物語を執筆。さらに道長と肉体関係を持っており、その影響で父親は受領に任命された。道長との関係がバレたことで越前に同行したが、道長が藤原宣孝との縁談を斡旋しさらに結婚中にも道長と肉体関係がありその結果生まれたのが娘である…と筆者は考えている。
紫式部が藤原道長の愛人であったという説が下敷きになって資料を集め推論を組み立てたのだろう。
根拠がない説を断定口調で述べているのは残念。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2022年5月21日
読了日 : 2022年5月20日
本棚登録日 : 2022年5月21日

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