「殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっているーー」「すべてがある点に向かって集約していく…そして、その時にいたるーークライマックスに!ゼロ時間だ。そう、すべてがゼロ時間に集約されるのだ」
アガサクリスティの作品の中でこれほど洗練された題名はそうあるものではない。殺人を結果と捉え、全ての出来事が行き付く先を“ゼロ時間”と表現した辺り、天才的としか言いようがない。また、序盤でタイトルでありキーワードとなる“ゼロ時間”が早々と紹介されるのも珍しい。よくポアロシリーズやその他の作品を読んで思うのだが、クリスティは出だしが実に自然で、「さあ、これから物語が始まるぞ!」という気がしない。それどころか、まるで登場人物の生活を覗き込んでいるかのような錯覚に陥る。だが、今回は違う。ゼロ時間というキーワードを軸に物語が展開していく。この事件におけるゼロ時間とは、いつか。普段のクリスティとは違った視点から読み進めていくことができた。題目と序盤。この作品において着目すべきは、この二点である。実に洒落ていて、格好良い作品だ。
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- 感想投稿日 : 2014年2月20日
- 読了日 : 2014年2月20日
- 本棚登録日 : 2014年2月20日
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