謎の独立国家ソマリランド

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  • 本の雑誌社 (2013年2月19日発売)
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ソマリアといえば内戦で大変な国。でもソマリランドって?聞いたことない!というのが本書を知っての最初の感想。だから「謎の」なのかしらん、と訝りつつ、かなり分厚いのでビビりつつ読み始めたのだが。

ここに出てくるソマリランドは、あの世界最悪の内戦の国と言われたソマリアから独立した国なのだという。しかも、無政府状態でありながら複数政党制による民主化に成功し、治安もよく平和な状態を長年にわたって保ち続けているのだが、国際社会では国家として認められていない、というおよそ信じられないような話。ならば、自分の目で確かめてこよう、と思い立って本当に行ってきた、それをまとめたのが本書である。

著者が、びっくりするような行動力とびっくりするような何とかなるさ精神で、実際にこの謎の国へ行き、あれやこれやで苦心惨憺、いいようにカネを払わされ、ぞっとする目にも合い、でもいつしか現地の人々の魅力に取りつかれていく様は、単に紀行文として読んでも面白いが、この謎の国の類まれなる研究の成果とも読める。参考文献も極端に少ないというこのソマリランドについて、いったいいつのまにどのようにして、情報を集め事態を整理し理解したのかと、不思議なほど詳しい。
おそらく、著者がソマリランド学(そんなのあるか?)の日本の第一人者であることは間違いないだろう。

そして当のソマリランドと言えば、列挙したい特徴的なこともいろいろあるが、何よりその国家としての成り立ちが恐ろしくリベラル。ある意味究極的な民主主義。
著者も言っているが、現代社会の中で、最も先進的な民主主義かもしれない。恐るべし、ソマリランド。

と、本書の素晴らしさを挙げてみたが、爆笑の記述もごまんとある。
海賊を雇って他国の船を襲わせる金儲けの算段とか…ええっ、それこそ海賊行為では??そりゃマズかろう…。
国連は会員制高級クラブのようなもん、とか。妙に納得~、説得力ある。
あまた登場するソマリ人を、日本の戦国武将やら貴族やらになぞらえて名づけ、日本史に疎い私にはあまり効果なしかと思いきや、意外にカタカナに漢字が付属してくるだけで頭に入りやすかったりして、びっくりの効果。

分厚さに戦いたのもなんのその、すいすい楽しく爆笑しつつ読了できました。
著者言うところの、ソマリランドに似ているという、ブータン。
『未来国家ブータン』も読まねば。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説以外(エッセイ・ノンフィクションなど)
感想投稿日 : 2013年7月4日
読了日 : 2013年7月4日
本棚登録日 : 2013年3月28日

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