ニックとグリマング

  • 筑摩書房 (1991年8月1日発売)
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感想 : 13

「60分で読めるけれど、一生あなたを離さない本」
—広告の仕事に携わる人間なら、一度は手にしたことがあるはずのジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』の腰巻に書かれた、あまりにも有名なキャッチフレーズ。じつは60分どころか30分で読めちゃうんだけど、広告制作に限らず、すべてのものづくりに応用できる方法がまとまっていて、あらゆるビジネス系ライフハック本は結局、これに集約されちゃうような気がするんだな。でもってソーシャライズなら『ティファニーのテーブルマナー』。姪が高校生になるときにこれを、社会人になるときは『アイデアのつくり方』を贈ろうと思ってる。短い本、すぐに読める本あなどるべからず、ということなのですよ。

この本も60分か、せいぜい90分くらいで読めるはず。なにせ児童書だから。それでいてディック作品群に共通する世界観をもち、ある設定やキャラクターは発表した作品にすでに登場していたり、後の作品に引き継がれたりしているので、ある意味でディック要素のエッセンスがつまってる感じ。じつはディックの作品て、そんなに読んでないんですけど、これを読んでディックがなぜ同業の作家のみならず、ポップカルチャーから哲学にいたるまで幅広い分野に影響を与えたか、ちょっとわかる気がしました。なんていうのかな、たとえ完結した作品であっても、どこか未完のようなところがあって、読者としては想像でそれを完結させてしまいたい衝動に駆られちゃうところがあるのね。この本も児童書らしく少年ニックの活躍で農夫の星には“とりあえずの”平和がもたらされるわけだけれど、ホレースの最期であるとか、その後のニックたちについて、実際“読むたびに中身が変化する”本のとおりになるのか、とってもとっても気がかり。
 ディックには続編の構想、なかったのかな。残念ながら生前、続編はおろか本作も出版されなかったので、それは彼の子どもたちだけが膝の上で聞いただけかもしれないな。

 もうね、しょうがないので、ハリウッドで映画化したらいいとおもうのよ。おそらくナルニア国ばりの壮大なファンタジーになるんじゃないかな。フクセイがプリンのようにくずれていくところなんて、現代のCG技術ならとてもおもしろいものになりそう。映画をベースにゲームソフトを開発すれば、AppStoreでも売れるんじゃない?個人的には『ファントム・ワージ』『グリマングの逆襲』『地球への帰還』の三部作で完結かな。スピンアウトとして『スピッドル・アドベンチャー』がTVシリーズ化したりしてね、しないかな、したらいいなぁ・・・なーんてどっかで聞いたようなタイトルしか浮かんでこないから、そろそろ『アイデアのつくり方』も読み直したほうがよさそうね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学
感想投稿日 : 2011年7月27日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年7月26日

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