若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

制作 : レベッカ・ステフォフ 
  • 草思社 (2015年12月12日発売)
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本棚登録 : 347
感想 : 33
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以前読んだ「サピエンス全史」と被る部分があり、理解がしやすかった。そういえば一年位前に、この著者の「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」を読んで、1/3もいかずに同じことの繰り返しで飽きて読むのを諦めたが、この本は、飽きることなく読み進めることができた。
人間とはどういう生き物か?というテーマに、進化や生物地理学といった切り口で、わかりやすく説いてくれる。
その内容はショッキングではあるが、納得性が高く、とてもスジが通っているように思える。
南北アメリカのマンモスなどの大形哺乳類は、ネイティブアメリカンの祖先が、陸地だったベーリング海を渡ってから、1,000年でほぼ全ての種が全滅した。
イースター島はモアイを運ぶために森林伐採をして、森が枯渇し、人が飢え、そして誰もいなくなった。
などなど、人間は、現代人だけでなく、素朴で自然に寄り添って生きてきたと思われていた未開人も、意図してかしないかは別として、実は多くの生物、植物を絶滅に追いやってきたという事実が何個も提示される。
また、人間は遺伝子の中に、大量虐殺、つまりジェノサイドを行うようインプットされている生物であるという事実は、あらためて示されると衝撃的ではある。
集団で生きる人間は、「我ら」と「彼ら」という対比を生み出し、「彼ら」を「我ら」より生き物として劣る存在として、または異なる人種や宗教、信条を持つ「彼ら」に対して大量虐殺を行ってきた。
その事実を提示されて、未来に向けてどうすべきかについて、若者向けに書いたとあるだけに、とても楽観的で前向きだ。
しかし、進化の過程として見れば、我ら人類は確実に絶滅に向かって、自ら突っ走っている、地球が産み落とした鬼子なのだという、よく考えてみれば当たり前の結論が残ると思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評論
感想投稿日 : 2018年3月23日
読了日 : 2018年3月24日
本棚登録日 : 2018年2月2日

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