タイの作家による短編集。元々英語で書かれた作品ではあるけれど、多分タイの作家って初めて読んだと思う。
書かれている情景はタイならでは(白人観光客相手の生業、徴兵制、闘鶏など)かもしれないけど、描かれている少年少女の心の機微はユニバーサルなものだと思った。鬱屈した思い、後悔、悔しさ、などなど。繊細な感性。
少し乾いていて、淡々としていて、どこか物寂しい文体。感情的にならずに伝えようとしてるけど、隠しきれない後悔や哀愁が滲み出ているような。
一番好きなのは、3番目の「徴兵の日」。
友情で篤く結ばれた2人の青年。迎えた徴兵抽選会の日。親からの賄賂の有無が2人の明暗を分ける。脆く崩れ去る友情。短いながらしっかりまとまった美しい作品。
国語の教科書や試験の現代文に載りそうな一作。
最後の「闘鶏師」は最もドラマチックな中編。読んでいて苦しくなる。
最後の最後に物語が展開し、これからというところで終結してしまったのが少し残念。でも綺麗な終わり方ではあった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年1月31日
- 読了日 : 2021年1月31日
- 本棚登録日 : 2020年11月27日
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