観光 (ハヤカワepi文庫 ラ 2-1)

  • 早川書房 (2010年8月30日発売)
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本棚登録 : 984
感想 : 108
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タイの作家による短編集。元々英語で書かれた作品ではあるけれど、多分タイの作家って初めて読んだと思う。

書かれている情景はタイならでは(白人観光客相手の生業、徴兵制、闘鶏など)かもしれないけど、描かれている少年少女の心の機微はユニバーサルなものだと思った。鬱屈した思い、後悔、悔しさ、などなど。繊細な感性。
少し乾いていて、淡々としていて、どこか物寂しい文体。感情的にならずに伝えようとしてるけど、隠しきれない後悔や哀愁が滲み出ているような。

一番好きなのは、3番目の「徴兵の日」。
友情で篤く結ばれた2人の青年。迎えた徴兵抽選会の日。親からの賄賂の有無が2人の明暗を分ける。脆く崩れ去る友情。短いながらしっかりまとまった美しい作品。
国語の教科書や試験の現代文に載りそうな一作。

最後の「闘鶏師」は最もドラマチックな中編。読んでいて苦しくなる。
最後の最後に物語が展開し、これからというところで終結してしまったのが少し残念。でも綺麗な終わり方ではあった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年1月31日
読了日 : 2021年1月31日
本棚登録日 : 2020年11月27日

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