二十歳のころ 1 1937-1958: 立花ゼミ調べて書く共同製作 (新潮文庫 た 59-2)
- 新潮社 (2001年12月1日発売)
青春とは、来るべき船出へ向けての準備期間である
漫画家、詩人、小説家、被爆者・・・。多士済々
31名に東大生が突撃取材。
さまざまな「あの時代」
誰もが不安と希望、焦燥と葛藤を抱き、だからこそ自分の生き方を発見する時期。
それが二十歳のころだ。
第二次世界大戦、原爆、憲法発布など、激動の時代に青春期を迎えた人々は何を考え、どう生きたのか。
1937年から1958年に二十歳を過ごした31人に東大・立花ゼミ生が突撃インタビュー。(アマゾンより)
印象に残った人物、言葉
川上哲治
「まあこれから人生を決めていくんだから、自分の人生を、ちゃんと、俺は何を持って生きていくんだっていうのを早い時期に決めたらそれを貫いていくようにしたらいいんじゃないかな。・・・ある目標を立てたらそれを貫く。中途半端にいろいろやっていると、生きてて良かった、と言う感じがなかなか出てこないんじゃないかな」
水木しげる
「好きなことをするには思い切りが要ります。最初はやりたい内容の浅い部分しか見えてないです。深いところまで行くにはやってみないとわからん」
「本当の人生は、60歳からですよ。」
茨木のり子
「ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを 近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを 暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を 時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ ばかものよ」
森毅
「受験戦争なんて何をぬかしとんねん、僕なんかの時代やとぐずぐずすると兵隊さんに取りに行かれて、人殺ししなきゃならなかった。戦後なんかはうっかりすると飢え死にする。今の日本やったら大体何したって大丈夫やろう。」
加藤恭子
「私は子供を育てるときに、たとえば大学受験のときでも、勉強しろとも、大学行けとも言わない。でもただ、『きけわだつみのこえ』だけ渡した。これを読んだあとでもなおかつ大学へ行きたくないのなら、それ一向にかまわないと。」
板倉聖宣
「海岸線に立って船が向こうから来るのを見ていると、マストの先から段々見えてくるのは、地球が丸い証拠だと言う有名な話。」
板倉は、「もしそれが本当でも、海には波があるじゃないか」と考えてしまう。そのあとアリストテレスの山のてっぺんが先に見え、そのあとふもとが見えると言う話を聞いて、しっくりきたという。
妹尾河童
人を惹きつけるためには、感性を磨いておくこと。
感性を磨くとは、絵を見ること、音楽を聴くこと、本を読むこと、疑問を持つものはすぐに調べること。自分が興味を持つものに常に応えていく生き方。
筑紫哲也
「理屈で災害救助だとか、社会保障だとか考えるのと実際は相当違っていて、個々の問題にぶつかると、論理的にスッスッと切って処理できない問題の方がはるかに大きいということを、土木作業をやりながら感じたわけです」
山藤章二
「愚かな者というのは、生涯常に不満を持っているものことをいう。賢者とは相対的な豊かさではなく、自分の満足を早くみつけたものを指す。」
「君たちへのメッセージとしては『勝手にしろ』『お気の毒に』『迷え』だな」
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この世代に共有されているもの、戦争である。
本書を通して、直接的な形ではなく、それぞれの経験や人生の形に組み込まれた戦争を感じることが出来た。
戦時中、戦後の過酷な生活環境を生き抜いた彼らは、タフでハングリーで、未来に希望を持っていた。
現代に特有の問題も多いが、彼らの時代から良い意味で刺激を受け、未来に繋げていく、そんな気持ちにさせてくれる本だった。
- 感想投稿日 : 2012年4月10日
- 読了日 : 2012年4月10日
- 本棚登録日 : 2012年3月21日
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