東京、というか首都圏に住んで働いていると地域経済みたいな概念がピンと来ないようなところがある。転勤で東京以外の土地にいくつか住んだが、転勤族として住むとその土地の経済とは半身だけ切り離されていたようなものだし、日本はどこまでいっても東京の周辺地域みたいな感じもある。その点、アメリカに行くと大企業の本社なんかもいろんな都市にあるし、日本よりかは地域経済が話題に上がりやすいような気がした。
この本は、国家単位で経済を捉えていては本当の姿がわからない、都市に焦点を当てなければ、と説く。なかなか日本からはこうした議論は出てこないのでは、と思う。
原著は1984年刊。まだアメリカが経済については自信喪失気味だった時代、冷戦の終結までもあと何年かある。よってか母国アメリカに関する記述はやや暗い(シアトルは軍需産業が落ち目だし、サンベルトもぱっとしない)。そのあたりはやや時代を感じるところではあるのだが、国の内部での地域間格差が大きな問題になることはアメリカに限った話ではなく、30年後をみごとに先取りしている。
都市のもっている力や可能性についてはあんまり具体性がなくて「輸入置換やインプロビゼーションと言われてもなー」程度の感想なのだが、逆にモノカルチャー経済になる供給地域や、単純に発展から取り残される地域の描写は説得的であり、それらのネガとして都市の重要性が浮かび上がる。
また、本書の骨子のひとつは、経済学でいう最適通貨圏の議論に他ならないように思うのだが、ネットでざっと見た限りではジェイコブズと最適通貨圏を結びつけた文章はほとんど見つからなかった。やっぱり経済学者じゃないからか。
- 感想投稿日 : 2020年11月29日
- 読了日 : 2020年11月25日
- 本棚登録日 : 2019年7月31日
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