格差社会: 何が問題なのか (岩波新書 新赤版 1033)

著者 :
  • 岩波書店 (2006年9月20日発売)
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『はじめに』
・格差は本当に拡大しているのか,見かけに過ぎないのか.
・「格差の何が悪いのか」といった考え方が,今日起きている論争の特徴.

『格差の現状を検証する』
・格差を測る指標は,資産,消費よりも,所得を用いる.
・ジニ係数(格差や不平等を計測する数値.0が完全平等,1が完全不平等)は,概して上昇している.
・筆者の考えでは,貧困者が増加し,かつその人々の所得が減少している.絶対貧困(これ以下の所得だと食べていけない)率は,大都市で2002年が15.7%,地方で10.8%となり,増加傾向にある.生活保護が105万世帯.貯蓄0の世帯が22.8%.
・格差は見かけか?高齢者は格差が大きい.その高齢者が増えたため,格差が増えているように見える,が政府の見解.
・結論として,日本では,かつてより所得分配の不平等度は高まってきている.次章では,その要因を考える.

『平等神話崩壊の要因を探る』
・格差が拡大した要因として,長期不況の影響.潜在失業率(就活をしていない人の率)と公表失業率(している人)を合わせると,10%は超えている.
・非正規労働者の数の拡大.
・労働市場の規制緩和.
・所得税,相続税など税の累進性が弱まった.
・構造改革の何が問題か.格差拡大の根本的原因ではない.しかし,格差拡大を容認し,規制緩和や競争促進の政策により,助長している.もちろん経済の活性化という賛同すべき効果もある.

『格差が進行する中で』
・格差が進行すると,何が起こるのか?

『格差社会のゆくえを考える』
・格差が広がっても大丈夫なのか?
・「格差の何が悪い」を小泉首相.経済効率のためにはしかたがないという考え.
・貧困者の増大は社会にとってマイナス.労働意欲を失う,労働力を失う,犯罪が増える,社会の負担を増やす,倫理的な問題.

『格差社会への処方箋』
・結果から見ると,経済の効率性と公平性はトレードオフの関係にある.しかし,機会から見ると,公平性を上げることにより,効率性も増す.したがって,トレードオフでは無い.
・高所得者が勤労意欲を失わないために,所得税を下げた.本当に勤労意欲をなくすのか?そのような証拠は無い.

『格差社会への処方箋』
・格差をどのようにして是正するべきか?

----------以下感想----------
「格差」とは何か?どのようにして測るか?
「格差が起きて悪いことがあるのか?」
という視点.
皆(私だけかもしれないが)あいまいなまま議論をしていたのではないか?
また,格差が論じられているご時勢だから,何かあるとすぐ格差に結びつける「偶然に秩序を見る」もあるかもしれない.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会・政治
感想投稿日 : 2010年3月5日
読了日 : 2008年4月5日
本棚登録日 : 2008年4月5日

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