ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質

  • ダイヤモンド社 (2009年6月19日発売)
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『プロローグ』
・オーストラリアが発見されるまで,旧世界の人たちは,白鳥といえばすべて白いものだと信じて疑わなかった.経験的にも証拠は完璧にそろっているように思えたから,みんな覆しようのないくらい確信していた.はじめて黒い白鳥が発見されたとき,一部の鳥類学者は驚き,とても興味を持ったことだろう.この話は,人間が経験や観察から学べることはとても限られていること,それに人間の知識はとてももろいことを描き出している.
・この本でブラック・スワンと言ったら,①異常であること.②とても大きな衝撃があること.③異常であるにもかかわらず,私たち人間は,生まれ付いての性質で,それが起こってから適当な説明をでっちあげて筋道をつけたり,予測が可能だったことにしてしまっている.

『第1部 ウンベルト・エーコの反蔵書,あるいは認められたい私たちのやり口』
『第1章 実証的懐疑主義者への道』
・私たちの頭は,ほとんど何でもつじつまを合わせられるし,ありとあらゆる現象に山ほど説明をつけられる.その一方で,予測なんかできないという考えはほとんど受け入れられない.戦争のときに起こったことには道理なんてない.
『第3章 投機家と売春婦』
・月並みの国(格差が小さい)⇔果ての国(格差が大きい).果ての国では,一つのことがすぐに全体に圧倒的な影響を及ぼしてしまう.この世界では,データからわかったことはいつも疑ってかからなければならない.月並みの国では,データから分かることは情報が入る度に急速に増えていく.でも果ての国では,データを積み重ねても知識はゆっくりと不規則にしか増えない.
『第5章 追認,ああ追認』
・最初から目に見える一部に焦点を当て,それを目に見えない部分に一般化する.つまり追認の誤り.「テロリストはほとんど皆○○教徒だ」と「○○教徒はほとんど皆テロリストだ」は異なる命題だ.
・裏づけを求めて犯す誤りに弱い私たちの傾向を,認知科学者たちは追認バイアスと呼んでいる.「2,4,6」.意味する数列を被験者が新たに提示し,一般化する.答えは,「数字は小さい順に並んでいる」,それだけだ.正解にたどり着いた被験者はほとんどいなかった.被験者は,なんらかの法則を頭に思い浮かべるが,自分の仮説に合わない数列ではなく,合う数列ばかり作ることに気付いた.
『第6章 講釈の誤り』
・私たちが講釈に陥りがちな大元の原因.①情報を手に入れるにはコストがかかる.②情報を溜め込むにもコストがかかる.③情報は複製したり取り出すにもコストがかかる.3つにいえることは,生の情報よりパターンのほうが小さくまとめられる.
・ここまでは,黒い白鳥を見えなくしている原因として,追認バイアスと講釈の誤りの二つを検討した.
『第8章 ジャコモ・カサノヴァの尽きない運』
・物言わぬ証拠の問題.神を信じて溺れた信者は,自分の経験を語ることはできない.
『第1部のまとめ』
・私たちは,起こったことには敬意を払い,起こるかもしれなかったことはそっちのけだ.だからこそ私たちはプラトン化する.
・今後の展開に橋渡しをしておこう.不確実性を相手にするなら,「焦点を絞る」なんてことは必要ない.「焦点を絞ってしまう」とカモになる.

『第2部 私たちには先が見えない』
『第10章 予測のスキャンダル』
・この章で論じる題目は二つ.第一に,自分は何を知っていると思っているかという件では,私たちは明らかに思い上がっている.第二に,そういううぬぼれが予測に関わるあらゆる活動にどんな影響を及ぼすかを見る.
・①意思決定をするときの方針は,結果の期待値そのものよりも結果がとりうる範囲のほうで決まる.②予測は,遠い将来のことになるほど質が悪くなることを勘定に入れない.③予測される変数のランダムな性質を見誤る.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 投資・金融
感想投稿日 : 2010年1月24日
読了日 : 2010年1月24日
本棚登録日 : 2010年1月24日

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