外科室・海城発電 他五篇 (岩波文庫 緑 27-12)

著者 :
  • 岩波書店 (1991年9月17日発売)
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「いいえ、あなただから、あなただから。」

『外科室』が読みたくて先にこれだけ読んだ。ん~~~ッ善い!
泉鏡花は初めてで、明治の文体につっかえながらだったけどなんとか読み切った。

現代とは異なり爵位制度が存在していて、身分違いの恋が許されなかった時代。言葉すら交わすことはなかったが密かに恋に落ちた学生と少女が歳月を経て、医者と手術を控える貴婦人として再会する。
貴婦人は夫と子供のある身で、心に抱える「秘密」をうわごとで漏らしてしまうことを恐れ、麻酔の使用を拒否し、「麻酔なしで手術を」と切々と訴える。・・・・

句読点での台詞の区切り方が好き。1つ1つは決して長くない台詞だけど、区切り方が良いからおのおのの切々とした思いが伝わってくる。

「秘密」の美しさを「麻酔なしでの手術」という常軌を逸した状況、熟成された時間、抗えない社会構造、一言も会話をしたことがないという一種の盲目的な純情さが装飾している。すごい作品だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年4月3日
読了日 : -
本棚登録日 : 2021年4月3日

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