赤い蝋燭と人魚 (若い人の絵本)

著者 :
  • 童心社 (1975年6月1日発売)
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本棚登録 : 106
感想 : 16
5

 小川未明は少女趣味という酷評を刷り込まれていたけれど素晴らしいと思った。
一目で「いわさきちひろ」とわかる挿絵の美しさとはかなさ。透明感に触発されて、この人魚の物語は欧物語の再話なのかと思いきや日本海を舞台の創作だった。挿絵の少女も着物を着ているけれど幻想的で無国籍な物語と感じた。人はどうしても大きいもの、財力のあるもの、名声に左右されてしまう。人知れず力を尽くした人のことに気づかず忘れてしまう。少女がいなくても地道に暮らしてきた人でさえその心を忘れてしまう。魚やけだものよりも人情があってやさしいはずの人間は愚かで流されやすい。そのことが私の胸の真ん中にズキンとメスを入れる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 読んでじんわり
感想投稿日 : 2021年12月7日
読了日 : 2021年12月7日
本棚登録日 : 2021年12月7日

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