0能者ミナト<4> (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2012年7月25日発売)
4.07
  • (45)
  • (66)
  • (29)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 607
感想 : 27
3

古来より言い伝えられてきた「船幽霊」の基本定義。
柄杓で細々と水を汲み船を沈めようとする。
今よりももっと規模の小さな船が主流だったころは、それでも船幽霊によって沈没させられた船もあったかもしれない。
けれど船体は巨大化し、小さな柄杓でどれほど海水を汲み上げようが船を沈めることなどできない。
湊を悩ます「船幽霊」に行動原理と、現実に起きている状況との違和感。
湊はそこに科学的で論理的な解を見つけ出す。
ヒントは読者の前に提示されていたのに、まったくそのことに気がつかなかった。
もちろん、科学的な知識が必要なことはわかるけれど、何となくでも思いつかなかったのは少し悔しい。
豪華客船が舞台ということもあって、今回はいつもよりもスケールの大きな展開になっている。
温厚な老夫婦から、口うるさい副船長まで、登場人物もさまざまだ。
曲を弾き続けていたヴァイオリニストもカッコいいし、恋人の死を嘆く女性の存在も物語の重要な鍵となっている。
いつもとは少し違った展開だったけれど、なかなかスリリングで面白かった。
短編ばかりでなく、こうした中編も読みごたえがあっていい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 怪奇小説
感想投稿日 : 2017年4月21日
読了日 : 2017年4月21日
本棚登録日 : 2017年4月21日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする