検証捜査 (集英社文庫)

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  • 集英社 (2013年7月19日発売)
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都内と神奈川県内で同時期に起きていた連続婦女暴行殺人事件。
手口は非常に似かよっていたため、特捜班にいた神谷は当時から神奈川での事件に注目していた。
しかし、取調べの過程で不祥事をおこし伊豆大島に左遷。
何かを諦め、何かを誤魔化すように、大島での生活を送っていた。
突然に下された特命に戸惑う神谷。
北海道、本庁、大阪、福岡などからバラバラに召集された刑事たち。そして畑違いの管理官。
寄せ集めの検証チームが編成された。
彼らは徐々に予想も出来なかった真実に迫っていく。
勇気ある人間の残した遺書が突き刺さる。
一部は判別できないほどに乱れた字が伝えてくる怖れ・・・。
本人が書いたとわかるようにDNA鑑定用にわざとつけられた血痕。
監視の目をかいくぐって投函されただろう遺書に込められた思いは、あまりにも重い。
正義よりも真実よりも大切にされる警察という名の組織。
「こんな馬鹿なことが起きるわけがない」と笑い、「架空の物語の中だけの出来事だから」と言い切れたらどんなにいいだろう。
だが、現実に数々の警察の不祥事が発覚し、隠蔽工作に加担した警察官たちが何人も処分を受けている。
氷山の一角、表沙汰にならないものを含めればその数はもっと多いはずだ。
彼らが守るべきものは警察という組織ではない。
本当に守るべきものは、正義であり市民の安全だと思うのだけれど。
誰かに話すということで何かが変わることもある。
神谷も凛も自分を変えたいと願っている。乗り越えたいと思っている。
知らなくてもいい真実は、彼らの中にどう受け止められたのだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 警察小説
感想投稿日 : 2017年3月8日
読了日 : 2017年3月8日
本棚登録日 : 2017年3月8日

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