グレアム・ヤング毒殺日記

  • 飛鳥新社 (1997年5月26日発売)
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感想 : 13
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生まれながらにして犯罪に手を染める人間がいるとは思いたくない。
けれど、もしかしたら実際にそういった種類の人間はいるのかもしれない。
そんなふうに感じてしまう作品だった。
グレアムの目的は殺すことではない。
毒を投与し続けたときの症状や病状の経過など、いわば人間を使った毒の効果を確かめるための実験のようにも感じた。
父親、継母、姉、親友、職場の上司、同僚など、彼の周囲にいた人たちが彼の実験台となっていった。
最初の犠牲者となった継母は、グレアム自身の強い後押しで火葬にされ、重要な証拠となるはずの遺体は焼かれてしまう。
身近な人間に毒を盛ったほうが観察しやすかったからでは・・・と作品の中では書かれていた。
たぶんグレアムは人として大切な何かが壊れてしまっていたのだろう。
その何かがいったいなんなのか、それすらも知らなかったのでは?とも思う。
この「毒殺日記」を愛読し、卒業時には尊敬する人としてグレアムの名前を書いていた日本の少女が似たような事件を2005年に起こしている。
実験対象となったのはやはり身近な家族だった。
人によっては大きな影響を与えてしまう本なのだろう。
グレアムの場合も、少女の場合も、事件を防ぐ機会は何度かあった。
にもかかわらず、法の規制の隙間をすり抜けて事件は起きてしまった。
少なからずグレアムのような人間がいることを前提として、彼らが安易に毒物を手に出来ないようにしなければならないと思う。

【サイコパスとは?】
他人に対する思いやりが欠けている。
罪悪感も後悔の念もなく、社会の規範を犯す。
人の期待を裏切り、自分勝手に欲しいものを取り、好きなように振る舞う。
【犯罪心理学者ロバート・ヘアによる特徴】
・良心が異常に欠如している
・他社に冷淡で共感しない
・慢性的に平然と嘘をつく
・行動に対する責任がまったく取れない
・罪悪感が皆無
・自尊心が過大で自己中心的
・口が達者で表面的には魅力的

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年4月10日
読了日 : 2017年4月10日
本棚登録日 : 2017年4月10日

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