魔法があるなら

  • PHP研究所 (2003年2月7日発売)
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本棚登録 : 999
感想 : 114

幼い頃、図書館で借りて夢中になって読んだ記憶があります。最近になってふと思い出したものの、タイトルも作者も全くわからず、どうしたものかと思っていました。
が、縋るような気持ちでおぼろげながら覚えていた「デパートで暮らすお話」「赤い表紙」という情報をもとに検索をかけてみたら、たくさんのレビューが出てきて、びっくりするくらい簡単にこの本まで辿り着けてしまいました。それくらい多くの人に愛されている本なんだなと、なんだか嬉しくなりました。

子どもの頃は、「閉店後のデパートで暮らす」という冒険に純粋にワクワクドキドキしていたように思います。リビーの視点から描き出されるスコットレーズは本当に魅力的で、わたしも行ってみたい!と何度思ったことか。大人になった今でも、閉店後のお店の非日常感にはちょっとワクワクしてしまいます。リビーと一緒にハラハラしながらスコットレーズを歩いていたら、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

ただ、このお話がワクワクドキドキするだけの楽しい冒険小説ではない、というのは、大人になった今だからわかることなのかなと、寂しい気持ちにもなりました。
冒険の背景にある、一家の生活の困窮具合と、子どもたちを嘘で誤魔化し続けるしかなかったママの苦しさが、冒険の煌びやかさが増すほどに際立つような気がします。リビーのおませな語りは可愛らしいですが、ママの苦しさを感じていたからこそ、負担にならないよう大人にならざるを得なかったのだろうなと、やるせない気持ちにもなりました。
邦題の『魔法があるなら』には、そんなやるせなさが詰まっているような気がしてなりません。アンジェリーンが自分たちには許されないことが他の家の子どもたちに許されるのは「ふこうへい」だとカフェテリアで泣いて訴える場面では、胸がギュッと締め付けられました。
物語はハッピーエンドを迎えますが、ほっとすると同時に、どことなく苦い気持ちが残ります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2017年9月17日
読了日 : 2017年9月17日
本棚登録日 : 2017年9月17日

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