金融政策の「誤解」 ―― “壮大な実験"の成果と限界

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  • 慶應義塾大学出版会 (2016年7月16日発売)
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感想 : 14

リフレ派の主張が正しければ、原油価格が上がろうが下がろうが、とっくにインフレ目標は達成されていたはずだ。
個別の物価の動きとそれを集計したインフレを峻別して考えろというのが岩田や原田の主張であり(原油価格が下がればガソリン代を節約した需要が他の財やサービスに向かうことからわかる通り、個別の物価の動きとインフレは無関係と説明されていた)、現状の政策で2%の物価目標に到達していたはずだ。
目標未達の原因を原油価格に転嫁する日銀の説明は卑怯だ。
緒戦(真珠湾攻撃)で破竹の勢いを示した黒田日銀は、ハローウィン緩和(ミッドウエー)を経て、現状は勝つ展望の全くない長期戦(マイナス金利はインパ作戦か)に突入しつつある。個人的には、早晩、ポツダム宣言を受託することになると思う。
本書の分析は客観的でおおむね妥当であると評価する。ただし、著者と私とで決定的に意見の異なる部分もあるので、★4とした。
本書が初著作だそうなので、今後の執筆活動に期待したい。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 経済
感想投稿日 : 2016年9月6日
本棚登録日 : 2016年8月31日

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