試される民主主義 20世紀ヨーロッパの政治思想(上)

  • 岩波書店 (2019年7月27日発売)
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政治思想史を専門とするドイツ人学者による20世紀のヨーロッパ政治思想史。第一次大戦、ロシア革命当時からの主としてドイツとロシアに着目し、ヨーロッパの政治思想の変遷を明らかにしている。基礎的な知識のない私にとって理解するのが難しかった。
「20世紀は何よりも「イデオロギーの時代」と捉えられることが多い」p3
「イデオロギーは「政治的宗教」と呼んだり、チャーチルのように「神なき宗教」と呼ぶ者もいる」p4
「どのようにしてイデオロギーがこれほどまでに魅力的たりえたか、を改めて意識することが我々には必要である」p4
「19世紀末にパスポート管理を行っていたのはオスマン帝国とロシアだけである」p21
「(バジョット)われわれは民主主義に近づけば近づくほど、粗野な大衆をいつも喜ばせてきた威厳や見世物が好きになっていく」p31
「第一次大戦は大陸の4つの帝国すべて、つまりドイツ帝国、ハプスブルク帝国、ロシア帝国、オスマン帝国を一掃したのである」p32
「(ロシア皇帝について)当時ヴェーバーが主張したように、カリスマはカリスマであることを立証し続けなければならないのに、多くの君主は明らかにそれに失敗した」p34
「第一次世界大戦は、2つの政治的なイメージを遺産として残したように思われる。ひとつは、国家、労働者、資本家の妥協の政治、言い換えれば、合理的な利益の追求の政治である。もうひとつは、国民を救済することに意思を集中させる、軍事化された政治である。どちらも、19世紀の古典的自由主義の否定であり、しばしば「大衆の政治への参入」と呼ばれる挑戦に独自のやり方で対応する試みだった」p49
「ヴェーバーの正当性の三分類、伝統、カリスマ、合法性・合理性」p79
「ヴェーバーは、党の政治機構によって支えられる「指導者型民主主義」に代わるものは、党官僚と名士が舞台裏で影響力を競い合う「指導者なき民主主義」しかない、と頑なに主張した」p79
「労働者と農民、および都市と農村とを結合した壮大な親社会主義連合に加えて、文化的ヘゲモニーの完全な制覇を実現した国はただ一つ、スウェーデンである」p123
「(ルカーチ・1920年)「真の民主主義」とは「形式的な自由」ではなく「連帯の精神のもとで緊密に統合され協力している、ひとつの集合的意志をもったメンバーの活動」である」p163
「(ヒトラー)国民社会主義は、最大限の科学的知識とその精神的表現に基づいた、現実に対する立派で高度に理性的なアプローチである。国民社会主義運動はカルトの運動などではなく、むしろ、人種主義の本質そのものに対する熟考から導き出された民族至上主義で政治的な哲学なのである」p176 
「(カール・シュミット)ムッソリーニのような独裁の方が自由主義的議会主義よりもはるかに信頼しうる民主主義の表現となる」p227
「(ヒトラー)わたしは独裁者ではないし、独裁者になるつもりもない。国民社会主義は、議会主義のもとで堕落してしまった民主主義の理念に真面目に取り組んでいるのであり、時代遅れとなった制度がもはや国民全体との実り豊かな関係を維持できなくなったという、まさにその理由で、われわれはそれを駆逐したのだ」p227

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感想投稿日 : 2019年9月30日
読了日 : 2019年9月30日
本棚登録日 : 2019年9月30日

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