不平等について―― 経済学と統計が語る26の話

  • みすず書房 (2012年11月23日発売)
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世界銀行のエコノミストによる、経済格差について書かれた本。短い紙面の中で歴史を含めた事実を簡潔にまとめ、わかりやすく説明している。参考になる表現が多かった。
「第一の目的は、読者に楽しい読書の時間を過ごしてもらい、読書の喜びを通じて新しい事実を知り、新たな視点から物事を見てもらうことである」p9
「今日では一般に「80対20の法則」と呼ばれているこの法則によると、20%の人々は結果の80%に責任があり、逆に80%の人々は結果の20%にしか責任がない」p16
「(一次大戦前のブルジョワ)富裕層は貯蓄の「担い手」としても有望な投資家としても、不可欠な存在ではないと思われる。むしろ寄生虫のようなもので、何もしなくても利子で暮らしていけたのだ」p24
「(社会主義)均一化は、より懸命に働き、より多く学ぼうとするインセンティブをすべて、あるいはほとんどすべて奪ってしまう。もちろん、起業家精神など論外だった」p60
「所得の均一化は、個人の生産性を高めるインセンティブをすべて奪い取ってしまう。何の見返りもないなら、より一生懸命働く理由があるだろうか」p60
「不平等の研究は、特に裕福な人々からは歓迎されない。著者はかつて、首都ワシントンの名門シンクタンクの幹部に言われたことがある。シンクタンクの理事会が、所得や富の不平等をテーマに掲げた研究に資金提供する可能性はまずないだろう、と」p84
「1820年頃、英国とオランダは世界で最も裕福な国だったが、当時最も人口が多くて最も貧しかったインドや中国の3倍ほど豊かなだけだった。ところが今日、最も豊かな国と最も貧しい国を比較すると、100対1ほどの比率となる。もはや世界で最も豊かではない英国と、過去30年間にすばらしい経済成長を遂げている中国を比べてみても6対1、つまり2世紀前の2倍にまで差が開いている」p96
「(貧しい国の有利さ)(貧しい国は、)豊かな国々で成熟した技術を貧しい国々は比較的低いコストで取り入れて、必要とあれば模倣し、技術的に追いついていくプロセスを開始することができる。対照的に、豊かな国々は技術的な障壁を新たに突破しなければ成長することはできない。すでにあるものを模倣するのは簡単だが、新たに発明することはより難しい。だから貧しい国々の成長率は、豊かな国々の成長率よりも高いのである」p100
「移民の流入は一般的には反動をもたらす。なぜなら移民流入は受入国の国民の仕事を奪い、賃金を引き下げ、そして何より重大なことに、異なる文化的規範を持ち込むことになると考えられているし、実際にそうなるからだ」p119
「1820年のグローバルな不平等はジニ係数50だったが、1910年は61に上昇し、1950年は64、1992年には66に達した。産業革命以来、グローバルな不平等は常に拡大してきたが、その拡大率は縮小傾向にあった。ところが過去20数年間、不平等は上昇に転じ、極めて高い値を保っている」p146
「世界の人口の1.75%にすぎない最も豊かな人々の所得が、最も貧しい77%の人々の所得と同じである」p148
「(グローバリゼーションのトリレンマ)①グローバリゼーションが継続する ②平均所得の国家間格差が巨大で、かつ拡大する ③労働力の国際間移動が厳しく制限されたままである、これら3つの条件を永久に維持することは不可能である」p150
(「トリレンマ」は、元々ハーバード大学 ダニ・ロドリックが唱えたもの)
「世の中には3つの嘘がある、嘘、真っ赤な嘘、そして統計だ。(マーク・トウェイン)」p157
「同盟が存続するためには、加盟各国の生活状況に幅広い類似性が存在していなければならない」p169
「国家を最も高い富裕度に至らしめるためには、平和、簡潔な税制、寛容な司法制度、以外はほとんどない(アダム・スミス「国富論」)」p193

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年11月4日
読了日 : 2018年11月4日
本棚登録日 : 2018年11月4日

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