卵一個ぶんのお祝い。 (東京日記)

著者 :
  • 平凡社 (2005年9月1日発売)
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もくじに並ぶ言葉が愉快で、どんな内容かと想像してから読む。

パジャマの上に服を着て出かけて、知り合いにあわないかどきどきしたり、
お風呂でスイカの種を飛ばしたり、
世界征服できる可能性を占ってもらう友達がでてきたり。

「るきさん」や「架空OL日記」が大好きなのでたまらなかった。


毎年3月がよいな。
「また、来年ね」と手を振ってくれる美容師さん。
黒い傘が桃色になる雨の日。
「桜が咲いてますよ」という電話。

春は初夏に、カロライナ・ジャスミンの香りに移っていく。

にがうりをくる日もくる日も食べ
「夏はいつまで続くのだろう。」
というが季節はいつのまにか変わり、また次の年の桜が咲く。

「あら、よくってよ。」が流行した明治二十四年は遠くなっていく。


「一度に一つのことしか考えられない質なのだ。」


なんにも起こらない日常。しかひ主人公はまぎれもなく川上さん自身である。

自分は最近、推しとか世間の人のことばかり気にしているな。
推しの頑張りを応援して頑張ってる気になってるかもなと思う。

別に頑張らなくていいし、愛し愛されとか、自己実現とか将来の展望とか、
そういうのがこの世界観の前には白くぼやけていくよう。

雨の日曜日にぴったりのしっとりした読後感でありました。

ーーー

・「山の上ホテル」でソルティードッグを頼むのは村上春樹作品オマージュだろうか?
・3人で傘もささずに歩いてる〜の句がすごく刺さったので、加藤千恵歌集を読みたい

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年8月22日
読了日 : 2021年8月22日
本棚登録日 : 2021年8月22日

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