げんきな日本論 (講談社現代新書)

  • 講談社 (2016年10月19日発売)
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感想 : 31
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『ふしぎなキリスト教』でおなじみの橋爪氏・大澤氏の対談。古代から幕末に至る日本史の特色を語りつくす。
興味深い内容が多いが、僕が特に印象に残った点をいくつか列挙したい。

1、武士とは馬を飼い、操る技術に習熟した人々であったという事。そのような人々が荷役や商人の護衛をしつつ実力をつけていった、という説。「馬」という動物を中心にす据えて武士を論じるというのは新しい視点だと感じた。

2、藤原薬子の乱は貴族が武器を取って戦った最後の戦いであること。承久の乱は天皇と武士が真っ向からぶつかった初めての戦いで、武士が勝利したという意味で画期的だった・・・等々。歴史に関する知識を増やすことができた。

3、信長のこと。安土城のデザインから、信長は天皇を安土に招くことを構想していたらしい。「招く」というのは目上のものが自分より下の者に対して行う事。つまり信長は天皇を下に見ていた、という事。信長の天皇観は大いに議論されているが、この考えは面白い。

4、秀吉については、「いつ信長が死んでもいいように準備していた。だからあんなに早く動けた」と書いている。常にあらゆる場面を想定していた、ということは信孝や柴田勝家は秀吉の中では常に「敵」だったのか。そう考えると秀吉は恐ろしい男だ。

5、江戸時代は流動性のある社会だった?武士から商人、、商人から武士という階級を超えた移行はできなかっただ、同じ階級内の流動性はあったという。大抵の農民が一生に一度は江戸に行ったことがある、というのも驚きの説。

『ふしぎなキリスト教』もそうだが、この二人の対談は非常にわかりやすい。読みかけて挫折した『おどろきの中国』にももう一度挑戦しようかと検討している。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史(学術・ノンフィクション)
感想投稿日 : 2016年12月17日
読了日 : 2016年12月17日
本棚登録日 : 2016年12月17日

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