「雅俗折衷体」という文体なそうです。しかし、正直とても読みづらかった。江戸時代の候文まではいかないが、講談調のよう。句点が打たれぬまま、一文がつらつらと1ページ程の長さに及ぶ。その中に、彼我の台詞が一緒になっており、これまたわかりづらい。こうした読みにくさのため、内容の半分くらいは、意味をくみとれなかったやもしれない。本作、この時代の小説を読みなれていない人には、全くお勧め出来ない。
「にごりえ」は、以下の2人が主な登場人物。「銘酒屋『菊の井』の売れっ子酌婦「お力(りき)」。(銘酒屋というのは、女性のいるクラブみたいなものか? すると酌婦は、常連の男客が「お力」ご指名で来店する様子もあり、云わばホステスみたいなものか…)。そして、もうひとり、その「お力」に入れ込んで、あげく、家計を傾かせ、家庭をめちゃめちゃにしてしまっている男「源七」の妻「お初」。終盤、この「お初」は源七の家を出る(離縁)。かような筋のあった模様。
「お力」が、幼少時の生家の貧しさを物語るくだりがある。お米を買いに遣いに出るのだが、滑って転んで、米粒の多くをどぶ板の下の水に流してしまい、途方にくれて家に帰れない…。そんな悲しい思い出。このくだりは印象に残った。
そして「たけくらべ」。吉原の近くにあり、廓の繁栄と共に賑わう町屋の界隈が舞台である。「美登利」という少女と、寺の息子「信如」の二人を軸に、お話が進むようであった。
吉原の近くの粋な風俗、町の賑わいが、生き生きと描かれている感じはあった。「美登利」と「信如」は、いわば幼馴染のふたりらしい。中盤、互いの異性や、周囲の目を意識し始めたためか、そして、照れもあってか、互いに距離を置くようになってしまう。そのあたりは、思春期の男女にありがちな感じで、キュンとするせつない思いがした。
※「龍華寺の信如」。「大黒屋の美登利」。
- 感想投稿日 : 2018年4月25日
- 読了日 : 2018年4月25日
- 本棚登録日 : 2018年4月23日
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