パルムの僧院 下 改訂 (岩波文庫 赤 526-6)

  • 岩波書店 (1970年2月16日発売)
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下巻。ファブリスは殺人の嫌疑で捕まり牢獄城塞に投獄されてしまう。だがこの獄舎での日々は、彼にとって必ずしも苦痛に満ちたものではなく、暗鬱でも無かった。この城塞でクレリアという美しい娘と再会したからだ(クレリアは獄舎の長官の娘)。ファブリスは、獄舎の小窓から娘に信号を介して通信。恋を育む。かくしてファブリスは、囚われの身でありながら、充実感と幸福を感じるのであった。

その後、叔母の公爵夫人の大尽力で、ファブリス脱獄の大作戦が進行。夫人は財力で獄吏らを買収、さらに大公周辺に人脈を総動員した謀略を仕掛け、ファブリス救出作戦を成功させる。

物語の中盤くらいから、これ一体どんな小説? という困惑を感じ始めた。主人公がファブリスであることは疑い無く、彼の脱獄と悲恋が後半の縦軸であるのもわかる。だが、パルム公国の宮廷を舞台にした、政治の謀略、廷臣らの群像劇などの周辺描写に多くの紙数が割かれる。
これは、19世紀の専制君主国家のありうる姿を描いた小説なのか? という気もしてくるのであった。パルム公国という架空の小国を舞台にしたのも、大公以下法相や軍の幹部(将軍)など主要閣僚が、やり手の公爵夫人と首相の謀略によって、容易に動かされてしまう、その為のコンパクト感なのでは?とも思えるのであった。
あるいは、そういう、構えの大きい小説なのかもしれない。

※以下 特にネタばれ↓

その後、ファブリスは補佐司教という要職に就く。だがクレリアへの想いは続いている。クレリアはファブリスの脱獄に際し、聖母に、生涯二度と彼の姿を目にしない、と誓いを立てた。さらには望まぬ結婚をするのだった。
二人は互いに深い思いを寄せ合うのだが、道ならぬ恋である。人目を忍ぶ逢瀬のみが許される。二人の子が生まれるが、ファブリスはその子を陽の下で愛することは叶わない。
幼な子は程なく病死。母クレリアもわずか数ヶ月後、後を追うように病死。失意のファブリスは「 パルムの僧院 」に隠遁。
 そして彼もまた程なくして世を去るのだった。

終章は駆け足のように、悲恋はさらに哀しい終幕を迎えるのであった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学(古典)
感想投稿日 : 2020年9月15日
読了日 : 2020年9月15日
本棚登録日 : 2020年8月30日

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