ゼロの焦点 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1971年2月23日発売)
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本棚登録 : 4104
感想 : 437
3

映画版を観てからの原作。
違いがわかって面白かったです。

以下ネタバレ?アリマス

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タイトルの意味は真逆!でした。映画版はゼロから発散のイメージでしたが、原作は逆にどんどんゼロへゼロへ焦点が定まっていく印象です。
これはある女性の、ゼロ=「心の荒廃」(p380)へ焦点をあてていった悲劇、かなと思いました。
*  *
社会問題から悲劇が起こると我々は、じゃあ被害者はどうなるのか?同じように生きて犯罪を犯さなかった大多数の人たちの立場は?とすぐ考えます。でもこれは現代人の視点かも知れません。
被害者の妻、主人公禎子の驚くべき言葉があるのです。
「夫人が、自分の名誉を防衛して殺人を犯したとしても、誰が彼女のその動機を憎みきることができるであろう」(p381)

えー(O.O;)(oo;)まさかの遺族が加害者擁護(@ ̄□ ̄@;)!!
当時誰も突っ込んでいない?のか、それともみんな納得だったのか…。

しかし、この発言があることで作品全体がよりゼロの焦点へ定まっていく…。そんな効果を上げていることも見逃せません。

映画版はさすがにこの辺りを〈現代風〉に脚色しておりましたが…。(ラストで佐知子の源氏名を叫ぶシーンが印象的でした)
小説版では、時刻表をもとに推理する場面があり清張さんらしくて個人的にツボでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年3月12日
読了日 : 2023年3月12日
本棚登録日 : 2023年3月12日

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コメント 3件

yhyby940さんのコメント
2023/05/18

大人の推理小説は、松本清張さんでした。「ゼロの焦点」「点と線」「砂の器」。当時はカッパノベルスという新書があって、それで読んだ記憶があります。個人的には「砂の器」が小説も映画も一番好きです。次に好きなのが「ゼロの焦点」でしょうか。また読み返したくなりました。

lem@本郷文学散歩編  さんのコメント
2023/05/20

大人の推理小説は松本清張さんだったのですね。「砂の器」は読んだことがないので読んでみたいです。映画もあるなら先にどっちか悩むところですが…。コメントありがとうございました!

yhyby940さんのコメント
2023/05/20

ご返信ありがとうございます。「砂の器」、機会があればご覧になってみてください。映画は橋本忍さん脚本、野村芳太郎さん監督、芥川也寸志さん音楽監督。私は好きです。

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