戦争の世界史(下) (中公文庫 マ 10-6)

  • 中央公論新社 (2014年1月23日発売)
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感想 : 17
5

もっと章立てを細かく分けてくれると読みやすいのだが
中身が面白いので許される

7章は1840年から1884年まで
宋代に始まる「世界の一体化」の完成時代
近代に入って封建主義から帝国主義に主流が変わったのは
西欧においてこれまでの産業化と国民兵化のいち早い達成が
少数人口での侵略を可能にしたからであるが
いってみれば一世代と少しくらいの先駆ではある
帝国主義が果たしてどれくらい有効性を示すか
当事者が意識していたかどうか
意識しても現在から50年先を眺めると同じくしても仕方ないことか

8章は1884年から1914年まで
産業化された軍事および国家統制をビスマルクの世代までは形だけでも達成できたが
急激な技術先鋭化で仕組みだけでなく仕様から効果を素人では判断できなくなった例が
イギリス海軍を例に示される独特な構成
この本の主題である軍事と産業の関係性が現在に続く状態のはじまり
現在の国家あるいは文民が産業技術をどれだけ統制できているかは
市場利益が導く先へ漂っているだけのようにも思えるが
なぜか上手くいっているともいえる

9章は年数を示すまでもない2度の世界大戦について
大戦の捉え方として
まず一般的な旧来の国家間における勢力均衡と
これまで本書が6章などからも示してきた人口動態を挙げている
特に人口動態は日本についても人口増加を含めて説明していて
単に帝国主義の一周遅れというだけに加え得る一つの説といえる
100年前の日本人は100年後といわずとも40年後の日本のありかたについて考え得ただろうか
歴史の教訓に例を引くまでもなく
日本人は戦争嫌いに変わったたわけではなく別物になったわけでもなく
たんに周囲の状況に乗せられているだけでしかないかもしれない
話を戻して本書の内容に戻ると
3つ目の歴史上から2度の大戦を捉えての特徴は
日本で言う国家総動員体制にあるとしている
限界まで産業とそれを生業とする人々を戦争の勝利に振り絞りきることを
2度に渡り30年掛けて単に一国がでなく世界の様々な国が成し遂げたことで
産業は決定的に常態を失って変質した
という説明は
戦争は技術を著しく発達させるという一面をより広く捉えたものといえる

10章は「戦後」冷戦下の核抑止力下で
まがりなりに世界が破滅せずに現在につながっている様子を描いて結論に至る
9章で見られた国家総動員は戦前の常態に復することはなかったが
それでも核兵器により今のところ世界は滅びていない
なぜか
たまたまである
理性に完全で永久の抑止を期待するのは過去の歴史から望み薄というほかなく
世界の一体化が営利企業規模の限られた範囲以上に拡がる見込みもない
国家あるいはお上への盲目的信仰というか忠誠というか所為にする姿勢は
薄れても無くならないし
宗教信仰からも個人的欲望からもまったく自由でない
全体利益と個人信条のつり合いは歴史上無視できる範囲の仕方なさで折りたたまれていって
なるべく長く続くことを祈る

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年10月19日
読了日 : 2016年7月10日
本棚登録日 : 2018年10月17日

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