オーバーヒート

著者 :
  • 新潮社 (2021年7月9日発売)
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「オーバーヒート」
「デッドライン」で院生だった僕は、博士論文も通り、15年の東京での学生時代が終わり、5年前に大阪に引越し、京都の大学で准教授となっている。舞台は2001年から2018年となっている。准教授としての生活と、自身の個人的生活が語られる。

デッドラインではふらふらと男性の間をさまよっていたが、こちらでは晴人という決まった男がいる。僕は40才になっていて、しかし肉体への欲望は変わらず率直に語られるが、対象は晴人に向かっている。

僕が帰郷するのに乗った新幹線で、「タナトスのらーめん」に出て来た、おっさんが「だーめだ」と言う、という文がまた出て来た。
デッドラインでは故郷の地名は出てこなかったが、こちらでは具体的な地名がバンバン出てきて、実家の場所とか、同級生の家とか、日光へ至る道とか、とてもリアルに想像できてしまった。いいのか悪いのか。

行間の空気感は「デッドライン」のほうが勝っているかな。でも性への渇望の描写はやはり率直でいい。映画「ブロークバックマウンテン」なんかをちょっと思い出してしまった。しかし、晴人との別れもほのかに感じてしまう。

僕はどこまで著者自身なのか? くり返し自身の生活を描いた西村賢太の世界と比べてしまう。

「マジックミラー」
店で会ったユウくんへの邂逅。覚えておく。僕は僕のこの体を。


初出:オーバーヒート 「新潮」2021.6月号
  :マジックミラー  文学ムック「ことばと」vol.1 2020.4.18 書肆侃房

2021.7.10発行 図書館

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・小説・エッセイ 日本
感想投稿日 : 2022年9月20日
読了日 : 2022年9月20日
本棚登録日 : 2022年9月19日

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