硫黄島 栗林中将の最期 (文春新書)

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  • 文藝春秋 (2010年7月20日発売)
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「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官栗林忠道」2005年新潮社では描けなかった名将の最期が、新たな取材と資料によって初めて明らかになる。

硫黄島からの生還者、大山純は復員したあと昭和21年8月3日付で硫黄島で栗林中将とともに最後の総攻撃をした模様を栗林家に手紙で知らせていた。またその後直接夫人と息子に会い死の状況を語っていた、それを長男の太郎氏はメモしていた。

それをまとめると、米軍上陸後1カ月以上ひたすら耐えて守りに徹した末、最後の拠点を敵に包囲されて栗林が決意した、ただ一度の総攻撃。総攻撃の10日ほど前に司令本部から第145連隊本部壕を出て、西海岸の断崖絶壁にそって南へ向かう。大山軍曹は栗林の後になり先になり進んだ。途中敵の砲火を浴び部隊は散会する。大山軍曹はその時「狙撃をして攻撃せんか」と傍らの高石参謀長に命じるのを耳にした。それが最後に聞いた栗林の声だった。大山軍曹は散弾に倒れそれ以後栗林を見失った。しばらく彷徨い戦闘指揮所に着くと「兵団長戦死」との報を聞いた。栗林は足に被弾しある軍曹の肩を借りて前進していたが、出血多量で絶命したという。出撃前に「私の屍を敵に渡すな」との命通り、高石参謀長が近くにあった木の根元の弾痕に埋めたという。

今回映画、生還者の手記、後世の取材記、と見たり読んだりしてみた。いずれも当時を振り返っているものだが、戦争の因果関係などの歴史的考察は別として、事、戦場の生生しさ、空虚さでは生還者の手記に及ぶものは無いと感じた

2010.7.20発行 2010.8.25第3刷 図書館

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・歴史(日本史)
感想投稿日 : 2019年8月24日
読了日 : 2019年8月30日
本棚登録日 : 2019年8月24日

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