21世紀の楕円幻想論 その日暮らしの哲学

著者 :
  • ミシマ社 (2018年1月29日発売)
3.92
  • (14)
  • (19)
  • (12)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 381
感想 : 27
3

2018.3.4のNHKAM著者からの手紙で語ったのに興味を持ち読んでみた。このラジオ番組、聞き手のアナウンサーも聞くツボを心得ていて、著者の世界を引き出して行く。

副題「その日暮らしの哲学」とあるように、15年続けてきた会社をたたんだ著者の平川氏が考える、金銭、モラルなどについて語った著。

memo
会社をたたむということは借金を返すということ。借金を返したら済々はしたが日々の生活にやる気が無くなった。お金とは交換を促進する道具であり、関係を断ち切る道具。モノを買えば物を受け取り金を払い、2者の関係は終わる。

ピーター・フロイヘン「エスキモーの本」の中のエスキモーの価値観。「「われわれは人間である」「そして人間だから助け合う、それに対して礼を言われるのは好まない。今日わたしが得るものを、明日あなたが得るかもしれない。この地でわれわれがよくいうのは、贈与は奴隷をつくり、鞭が犬をつくるということだ」
エスキモーから肉をもらいお礼を言ったフロイヘンに対しエスキモーは怒った。部族社会の人々にとっては、自然からの贈与は、自分たちが生きていく条件であり、感謝の気持ちはあっても、等価交換的な返礼の気持ちはない。

政治というのは、きれいごとの論理が通る場でなければならない。政治の役割は国民国家のフルメンバーが衣食足りて平和にくらせるよう、すぐには実現できないとしても、実現に向けて努力する責任がある。

「文化」は「ためらい」と「うしろめたさ」

「楕円」には焦点が二つある。「有縁」と「無縁」、お金と信用、欲得と慈愛という相反する焦点があり、それがいつも綱引きをしている。それらは反発しながら相互に依存している。
・・・面白かったのが「木綿のハンカチーフ」の考察。現代の楕円思想が現れているという。田舎と都会、情とお金、生産と消費という相矛盾する二つの項を鮮やかに対比させてみせた。そして”この歌は徹頭徹尾、男目線の、ある意味で身勝手極まりない歌なのです”という。日頃思っていたことを1950年生まれの男性の平河氏がきっぱり書いてくれて、こういう男性もいたんだ、と目をみはった。これが上野千鶴子なんかが言ったらたちどころに攻撃の嵐ですね。

解決がつかない問題の前で、逡巡する時間を経たのち、わたしたちがとるべき行動は、「やむを得ず、引き受ける」こと以外にないように思います。解決がつかないままに一身に引き受ける、というんですか。

本よりラジオの方がおもしろかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・小説・エッセイ 日本
感想投稿日 : 2018年3月7日
読了日 : 2018年3月7日
本棚登録日 : 2018年3月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする