ずっと以前に晩餐会の場面から見た事があった。なにやら貧しそうな村で老人ばかりが集まりバベットと称する女性の作った豪華なディナーを食べている。食べ終わった後はみな幸福感を感じた、というものだった。おいしい食事のもたらす幸福感は途中から見ても感じた。今回最初から見て、そのおいしい食事のもたらす幸福感は同じく感じたが、その経緯とかがわかり、ちょっと疑問に感じた事があった。
ユトランド半島の寒村。教義を開いた父の教えを老姉妹が今も守っている。晩餐会に至るまでには実に49年の月日が流れている。1836年、1871年、1885年と、姉妹の若かりし頃の恋愛、バベットがやってくる、そして晩餐会だ。
晩餐会は、妹の元思い人パパンの紹介で住むことになったバベットという元料理人が作った料理に、姉の元思い人の軍人も招いてあり、父の生誕100年記念行事でもあった。
疑問1 姉妹の父は家庭を作ることを重視しない教えを創始したが、自身では姉妹を設けているのに、姉妹の恋人には暗に去ることを求めた。これは矛盾ではないか。姉妹は父の教えに囚われすぎ、自身の家族を作る、という別の幸福を父によって逃されてしまったのではないか。
疑問2 姉の思い人の軍人は、姉妹の父の教義に触れなにやら無常感を抱き、自ら教会を去った。しかしそこには暗に父の去れ、という空気を感じる。が、軍に戻ると名家の娘と結婚した。だが49年たって姉に会うと、やはり姉こそ思い人だ、という描き方。軍人の妻は愛の無い結婚をされたのか? 名家の娘がかわいそうではないか。
ユトランド半島、1800年代で描かれたこと。
・ユトランド半島というのは辺境であるらしい
・ユトランド半島の寒村に住む人たちの食事は簡素、というより粗食。特に主人公姉妹の食事はバンをビールで煮込んだものと魚のスープ。それに比べパリではバベットの作ったようなフルコースの宮廷料理があった。
・漁村であるから、何か白身の魚が干してある。が、その魚でとてつもなくおいしい食事を作っているわけではない。
しかしこれらのことを差し引いても、バベットの晩餐会の食事には目をみはる。特にウズラのパイ。かりかりにローストされたウズラの小さな頭を軍人がぱりぱりと歯で噛む。これが印象的。
原作者はカレン・ブリクセンの同名小説。ブリクセンは映画「愛と哀しみの果て」の原作者でもあり、アフリカでの生活を描いたそれは自伝的作品。でなんとデンマークの紙幣の肖像になっていたということだ。
1987デンマーク
2021.9.12BSプレミアム
- 感想投稿日 : 2021年9月14日
- 読了日 : 2021年9月12日
- 本棚登録日 : 2021年9月13日
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