王妃の館 下 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2004年6月18日発売)
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本棚登録 : 2157
感想 : 200
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シリアスな内容なのかなと読み始めた小説だったが、コミカルな小説だった。

パリのヴォージュ広場で300年の伝統を誇る「王妃の館(シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ)」は、世界中の観光客あこがれの最高級ホテル。この15室しかないホテルの知名度を利用し、倒産寸前の旅行会社が企画した起死回生策とは、「王妃の館」に滞在するパリ10日間149万8000円の超豪華「〈光(ポジ)〉ツアー」と、19万8000円の格安「〈影(ネガ)〉ツアー」を同時に催行し、ツアーの「二重売り」によって月末の手形決済を切り抜けようというもの。
しかしながら、両ツアーともに、参加者はひとクセもふたクセもある個性派ぞろいで、参加者たちが繰り広げる予想外の事態により、ツアーの二重売り計画は次々と危機にさらされ、破綻していく。トラブルの連続、突拍子もないギャグ連発のドタバタ人情劇は、エンターテイメント性たっぷりに楽しませてくれる。この現代劇の合間に、17世紀の「王妃の館」にまつわる逸話が、しっとりとした趣で織り交ぜられていく。
現代劇の最後は、できすぎのハッピーエンドというのもホッとする展開だ。いわく、「光には影がなければおかしいし、光あってこその影なのだから」と。また、ときに登場人物に語らせながら、随所に散りばめられている著者の思想や社会批判がなかなか痛烈である。

浅田次郎らしい、笑いなのかにも感動があり、そこに歴史的な事実を織り交ぜて、素晴らしいストーリー展開だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 浅田次郎リスペクト
感想投稿日 : 2013年4月7日
読了日 : 2013年2月24日
本棚登録日 : 2013年2月24日

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