グローバル・タックス: 国境を超える課税権力 (岩波新書 新赤版 1858)

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  • 岩波書店 (2020年11月24日発売)
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5

簡単ななまとめ

情報技術の進歩とタックスヘイブンの登場によって、企業の利益や高所得者の所得への課税が困難になり、その穴埋めとして消費税等、移動制の低い税金に財源が傾斜しているのが昨今の情勢である。

グローバル企業は商標権など、妥当な金額で評価することの困難な無形資産を、租税回避地に所在する現地法人に低額で譲渡する。別の現地法人にはその無形資産の使用料を高額に設定してそれを費用に計上して、租税回避地ではない現地法人の税引前利益を少なくする手法をとる。

租税回避の解決策として 3 つの案が提案された。わかりやすく解説されていたのだが忘れてしまった。

また EU といった超国家的な統治機構がこの歪な状況の是正に一役買うことも期待されている。

感想
グローバル企業の租税回避的行動等によって、中低所得層が割を食っている現状を是正することは必要だろう。

しかし GAFAM 等大手テクノロジー企業や VC は貯め込んだ豊富な資金によって有力スタートアップに多額の資金を供給し、科学技術の飛躍的な発展を成し遂げたことも事実である。それは行政の包括的な企業の支援より無駄が少なく、効率的に資金を投入することを可能にさせただろうと思う。

また株主の利益の最大化を目指すことが使命である株式会社や、競争環境に置かれている会計事務所はそれぞれの目的を達成するため最良の手段を取るだろう。そして、現状、租税回避ができる環境である以上、それを利用するのは必然である。

課税の強化を図る必要があるのは、累進性の喪失による中間層の生活苦から極右の台頭を許し、民主制そのもの危機が生じたことや、政府の役割を強化することによって一般的な経済学でよく用いられている、市場の失敗や独占への対処の強化が必要だからであろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年10月3日
読了日 : 2023年10月3日
本棚登録日 : 2023年10月3日

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