ハンナの記憶 I may forgive you

著者 :
  • 講談社 (2012年7月27日発売)
3.32
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本棚登録 : 78
感想 : 18

【あらすじ】
横浜の山手出身の祖母を、老人ホームに入居するまでの間、預かる事になった。
その家の高校2年生の娘が、日米戦争中の祖母とその友達、ハーフのハンナとの交換日記を見つけた事と、311の震災を経験した事を、戦争と震災、人と人のつながりを学生の目線で描いた作品。
交換日記から、祖母とハンナがそれぞれ辛い出来事を体験した事と、ハンナの特殊な状況では、似た境遇の外人とその家族が人まとめで収容されていた事実を知る事になる。
やがて、戦争が終わり祖母とハンナはお互い理解し合えないまま、分かれる事になるが、作中の終盤で手紙のやり取りから、数十年ぶりに合う事を約束し、物語を終える。
この間にいくつか震災時の出来事が描かれるが、こちらは割愛しておく。
【感想】
横浜の山手は西洋の人が住んでいたこともあり、西洋館が残されており、そこに足を運んだこともあるからこそ、臨場感をもって読めた。
また、戦争に突入するにあたって、祖国に帰ることを選ばなかった外人がどのような扱いを受けていたのかを、この作品から学ぶことが出来たと思う。ただし、戦争と震災がバッチリかみ合ってはおらず、テーマがボヤけたような、いまひとつ伝わりきらなかったもどかしさを感じた。
きっと、作者も薄々気が付いているだろうし、大切な何かを俺自身捉えきれずなんだかモヤモヤした気持ち。

震災と原発については、何が悪いのかを考えるよりも、何をこれからしなくてはいけないのかを、考える方向に作品をもっていってほしかった。
ここまでネガティブな感想になっているけれど、祖母とハンナのやり取りの日記は本当に良かった。前向きで行こうという気持ちや、互いの境遇を生々しくも物語の友情ありきで描き、読んでいて楽しめた。
主人公の恋愛に関しても、結局冷める事になったりと、中途半端な感は否めなかったが、作者のデビュー作という所からすると粗削りではあるけれど、知識としても、震災を思い出すきっかけにもなった。
この作品は好きになりたいけれども好きになりきれない、というなんだか惜しい作品で、こんな感想を抱いたのは初めてだからなんかもどかしい。
なにを書いてるか自分でもよくわからないけれども、。
あと、作者はムサビ出身ということで、これまた何かの縁だったんだろうさね。
こんど山手の西洋館に一緒に足を運びたいもんだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月3日
読了日 : 2019年2月17日
本棚登録日 : 2024年1月3日

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