「花のない花屋」。タイトル通り花の在庫を置かず、依頼があればそれに沿った花束を作る花屋の話。いや、「花屋の話」というよりも「依頼主の人生の話」。というのも、本のページを捲ると、まるで写真集かと錯覚するほどの美しい写真と、その花束を作るに至った100人の人生が綴られていた。一見すると、この本の主役は花に思える。けれど、その花が生み出されたのは、この世界の誰かが生きた証であったり、「この気持ちを形にしたい」と願う心があったから。作り手の方は、100人からそれぞれ添えられたリクエストをそのまま咀嚼するのではなく、寄り添うように花を選び組み合わせていらっしゃる印象。洗練された技術の中に、心緒を見た気分だ。毎晩、少しずつ読んでから眠っている。
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- 感想投稿日 : 2021年4月29日
- 本棚登録日 : 2021年4月29日
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