個人的にはツァラトゥストラの内容の解説よりも西研さんの意見、考えの記述が多いように思いました。
しかしながら、ニーチェの人生や彼を取り巻いていた人間関係や環境などはとても分かりやすく解説されていました。ツァラトゥストラを読む前準備にはとてもいい本だと思います。
神様とか天国というのはゴリゴリに辛い現実に耐えられない人間が何とかして前向きに生きていこうとして作ったもの。キリスト教なんかもそう、“汝、真実を語れ”というのなら、その言葉を本当に突き詰めるのなら“本当は神様は存在しない”ということと真正面から向き合わなければいけないのでは?という指摘は、ほとんど信仰心のない私も少し動揺しました。絶対的な善も悪もないとなるとどこに心のよりどころを求めればいいのか、ニーチェからするとそんなものはないのでしょう。しかし、彼自身が発見し世に説いたその“確かなものが何一つない”不安からニーチェ自身も病んでしまったのは気の毒だなと思いました。
また、現実として孤高の超人を目指すのではなくいろんな人と関わり合いを持ちながらいった方がいいという考え方は私もそうだなあと思いました。でも、難しいですよね。他者と渡り合っていくとなるとどうしても自分と相手を比較してしまったり、自分が持っていないものを相手が持っていると羨ましく思ったりと何かと己のルサンチマンが顔を覗かせてしまいます。永劫回帰については、いいことは何回でも繰り返し起こってくれて大いに結構なのですが、辛くて暗いいやなことだけは都合よく記憶から抹消してしまいたい、どうかその部分だけは繰り返さないでほしいと私は思ってしまいます。
その点については、受け入れられないなら呪え!という開き直ってるところがにニーチェの優しい矛盾であり、それと同時にそれが上手にできればニーチェも発狂しなかったのではないかなと思いました。
劇薬的著書ツァラトゥストの解説書でもかなりの副作用?があったので、考えがまとまらないままレビューを書いておりますが、本作を読んだらどうなってしまうのか今からドキドキです…。
- 感想投稿日 : 2022年5月3日
- 読了日 : 2022年4月30日
- 本棚登録日 : 2022年4月14日
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