娘を失った女教師が教室で告白を始める。「この中に娘を殺した犯人がいます」
このストーリーを聞いたときに「なるほど、女教師が生徒に命の大切さを教える物語か」そう思った。実際その予測は4分の1だけ正しかった。私が推測した物語は冒頭30分で終わってしまったのだ。
全体を通して言えば、共感と裏切りを繰り返す良くできた物語だった。物語は共感を許さない。クラスの集団意志は実にリアルに描かれていて、現代の若者でない自分でも「そうそう!こうやって笑ってごまかすんだよなあ!」と共感を生む。自分がそこに居たら犯人の生徒とも同じ行動を取るかもしれないなあ。なんて思っていると、次の告白で主体が変わるといとも簡単に自分の共感を裏切られる。
「じゃあ、せめてこの女子高生の気持ちは分かるよ」と思っても、それも裏切られる。
娘を失った悲しい女教師の話ではない、集団意志の中で正義の名のもとに残酷ないじめが行われることを糾弾した映画でもない、少年法の理不尽さを訴える映画でもない。
人の心など分からない、ということを鮮烈に描いている映画なのである。自分が最初の30分に推測した教師、A、B、女生徒、それぞれの気持ち。それらは全て告白によって裏切られる。つまり、かわいそうだね、大変だね、という共感自体が、あの狂気化して己の正義を振りかざして人を傷つけるクラスと同じ行動になるということなのだ。
映像は美しいものの、全体ではひどく純粋で汚く、見たくないものを描いている。だから後味は非常に悪いものになるが、それほど気持ちをえぐるようなインパクトのある作品で見ごたえのある1本である。
- 感想投稿日 : 2013年3月6日
- 読了日 : 2013年3月6日
- 本棚登録日 : 2013年3月6日
みんなの感想をみる