彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社 (2015年10月20日発売)
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本棚登録 : 2798
感想 : 243
5

黒幕はやっぱりあの人か。世界が変わりつつある現代にぴったりな近未来SFミステリ作品です。

森博嗣さんのミステリを久しぶりに読みました。
「すべてがFになる」などのこれまでの作品では強烈なキャラクタにストーリが引っ張られていく印象でしたが、本作では、それらがとても淡白。
静かに世界の終焉に向かっていく近未来のディストピアが、淡々と語られています。
こんな森博嗣があったのか、と驚かされます。

まるで人と見分けがつかない人造人間(ウォーカロン)が世界に溢れている中で、じゃあ、人間の定義とは何か、という
本質を探るライト科学ミステリといった様相です。
SFではよく語られるテーマでありながら、主人公ハギリ先生の淡白な目線を通じて、独特な世界観が示されます。

それにしてもハギリ先生のポンコツっぷりが凄い。
世界の最先端の研究を黙々とこなす一流の研究者であるのは間違いなのだけど、博物館にいくと駄々をこねて暗殺者に狙われたり、勝手に街に繰り出して酔っ払ったり。そのたびに荒事を引き受けるウグイさんの苦労が偲ばれます。

エンタテイメントとしてもバッチリ楽しめる良作。
お家読書にぴったりです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年5月10日
読了日 : 2020年5月10日
本棚登録日 : 2020年5月10日

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