何者でもない (講談社文庫 は 36-3)

著者 :
  • 講談社 (1995年10月1日発売)
3.30
  • (8)
  • (17)
  • (60)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 256
感想 : 14
4

昔通っていた予備校の先生のオススメの本の一つにあったので読んでみました。

<あらすじ>
主人公のショウジショウイチは劇団21世紀少年の役者(といっても実態は裏方や通行人役などをする奴隷)。
本書は3章構成になっていて、それぞれショウジショウイチを中心に劇団員との関わりが描かれる短編連作集なのである。

1章:
元劇団員でショウジショウイチと同期だったクスコちゃんの引越しのお手伝いをする話。

2章:
劇団の看板役者、三島さんが失踪したのでショウジショウイチが探す話。

3章:
新人奴隷のカンパチ青年と劇団内の公演に向けて二人芝居を練習する話。ショウジショウイチと一時期関係のあった真知ちゃんが出てきて・・・


<感想>
ショウジショウイチを通じて、移ろいゆく劇団の人々の繊細な心理描写が胸に染みます。

私には劇団の人たちのような夢は持っていないという点では大きく異なりますが、
このまま何もなく終わるのではないか、今のままで本当にいいのだろうかと思い、悩む彼らの様は自分と重なるところがありました。

作中にはロクでもない奴や、今後苦労するだろうなあという決断する人が出てきてスカッとする類ではないですが、
ロクでもないことも、苦労するであろうことも一つの「状態」であって、正解不正解をつけられるものではない、と感じさせられました。

劇団や役者の知識がなくても不思議なほど読みやすいと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年5月17日
読了日 : 2021年5月17日
本棚登録日 : 2021年5月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする