漂砂のうたう (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2013年11月20日発売)
3.44
  • (26)
  • (50)
  • (69)
  • (20)
  • (4)
本棚登録 : 541
感想 : 77
3

大政奉還、明治維新、そこから10年。根津遊郭の美仙楼(心淋し川のご近所でしょうか)の立番となり、客引きをする男は、元御家人、定九郎。出自を百姓と偽り、今の仕事に流れ着いた。日本の変化に取り残された男と、自由は名ばかりの遊郭の女達。
明治維新の主役とはなれなかった人たちを取り上げて、自由という言葉だけが先走る空虚な日々。
定九郎が、ずーっとふわふわしているので、物語もふわふわしてる。行きどころの無い、遊郭の女達の覚悟した雰囲気との対比で、その不甲斐なさが際立つ。武士がその立場を失った当時が偲ばれる。
情景とか歴史感はとてもしっくりと読めるのだけれど、所々に挟む「学問のすすめ」や「自由民権運動」が、あまり物語にハマってこないなあと思う。
花魁の失踪と圓朝の噺を重ね合わせて幻想的で良いんだけど、失踪の顛末は、あまりに想像通りでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 直木賞
感想投稿日 : 2023年4月24日
読了日 : 2023年4月24日
本棚登録日 : 2023年4月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする